ファイナンス 2018年2月号 Vol.53 No.11
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記念イベントとして「車座トーク~本と本屋の未来について語ろう」が開催された。書店、出版社、取次という業界3者が集まって活発な意見交換がなされた。その模様は、「本屋がなくなったら、困るじゃないか~11時間ぐびぐび会議」(2016年7月 西日本新聞社)となって刊行されている。「本屋は街づくりの中心になれるんです」という言葉が心強く感じられた。4終わりにJR中央線武蔵境駅の南側に、図書館のイメージを変えた「武蔵野プレイス」がある。図書館を中心とした様々な複合施設である。ぼんやり座っているだけでも楽しい。日本におけるサードプレイスの理想的な在り方の1つだと思う。昨年末、福岡に用務があった際、空いた時間で大井さんに面会すべくブックスキューブリック箱崎店をおとずれた。JR鹿児島本線箱崎駅近くにある。お店の2階のカフェ・キューブリックで自慢のオリジナルブレンドのコーヒーを頂きながら、独立系書店の今後についてお話を伺った。この場所で、著者を招いたトークイベントも頻繁に開催されている。荻窪にできたTitleの店主辻山良雄氏は著書「本屋、はじめました」(苦楽堂 2017年1月)で「本は今、インターネットで、家にいながら買うことのできる時代です。そこで商品を買おうとする人がいるのは、ものを買いたいから、欲しいからというよりは、お店にいくという体験がしたいからだと思います」と喝破している。このような思考が書店をより魅力的な場所にして、地域活性化にも良い影響を与えることは間違いない。なお、これらの独立系書店のホームページはとても魅力的で掲載記事の更新も頻繁だ。いわゆるリアル書店(実店舗。ネット書店に対する用語)であっても、インターネットがその書店の重要な入り口であることを深く認識して柔軟に対応していることが分かる。図書館・書店については、従来型モデルに固執しなければいろいろな可能性を見出すことができるし、それが地域活性化の文化的な基盤となることを確信する。この記事がファイナンスの読者の皆様にもこの分野の動向にぜひ関心をもっていただくきっかけになれば幸いである。最後に、この記事を書くにあたり、永井伸和氏、大井実氏からは快く写真を提供していただいた。また、株式会社文藝春秋文藝出版局第二文藝部の東郷雄多氏には意見交換に付き合っていただきいろいろご教示賜った。これらの方々のご厚意にあらためて感謝したい。(ありうべき間違いは筆者に責がある。文中の意見はまったく個人の意見であり、所属する組織とは独立のものである。)写真11 箱崎店(2Fにカフェとパン工房がある)プロフィール渡部 晶(わたべ あきら)沖縄振興開発金融公庫副理事長1963年福島県生まれ。87年京都大学法学部卒、大蔵省(現財務省)に入省。福岡市総務企画局長、財務省地方課長兼財務総合政策研究所副所長、内閣府大臣官房審議官(沖縄政策担当)などを経て、17年6月から現職。「月刊コロンブス」(東方通信社)で書評コラムを掲載中。出身の福島県いわき市の応援大使を務める。42ファイナンス 2018.2図書館・書店を拠点とした地域活性化への展望~日本における「サードプレイス」の可能性 SPOT

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