ファイナンス 2018年2月号 Vol.53 No.11
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1はじめに(1)図書館・書店・出版の現状*1本題に入る前に、図書館・書店・出版の現状について概観しておきたい。ア.図書館数平成27年(2015)度の「社会教育調査」(3年ごとの調査)によれば、図書館数(同種施設を含む。)は3331で、前回調査に比べ57(伸び率1.7%)増加し、過去最高となった。筆者が特集「岐路に立つ公立図書館~多彩なサービスで行きたくなる場に」*2に協力させていただいた、日経グローカル2017年7月17日号によれば、2016年4月時点で804市区(全市区の98.9%)、519町村(全町村の55.9%)に存在している(日本図書館協会調べ)。付言すると図書館事業は自治事務である。また、図書館法に基づく補助金は1998年をもって廃止、一般財源化されている。したがって、持論だが、図書館をみるとその自治体のあり様がよくわかる。その自治体の見識が問われている。まさに格好のメルクマールだと思う。イ.書店数毎年恒例のニュースは書店がどんどん減っているというものだ*3。全国の書店数は1万2526店で、2000年の2万1654店から4割強も減った(書店調査会社アルメディア調べ、2017年5月現在)という。朝日新聞が昨年8月に報じた(「書店ゼロの自治体、2割強に 人口減・ネット書店成長…」2017年8月24日)。また、上記の記事によれば、「書店が地域に1店舗もない「書店ゼロ自治体」が増えている。出版取次大手によると、香川を除く全国46都道府県で420の自治体・行政区にのぼり、全国の自治体・行政区(1896)の2割強を占める。「文化拠Spot02図書館・書店を拠点とした地域 活性化への展望~日本における「サードプレイス」の可能性 渡部 晶写真1 従来の図書館のイメージを変えた武蔵野プレイス(JR中央線武蔵境駅南側 武蔵野市)~日本における代表的な“サードプレイス”*1)図書館や書店のデータは、有料で高価なものや入手に手間がかかるものが多いため、限られた時間の中、直接原資料に当たるのがなかなか難しく、報道記事の引用になっていることをご容赦いただきたい。*2)編集後記で、グローカル副編集長の磯道真氏は、「図書館特集にあたり、財務官僚で現沖縄振興開発金融公庫副理事長の渡部晶さんから多くの情報と助言をいただいた。(中略)図書館オタクでもある渡部氏は、「専門性が必要な図書館は独立行政法人化すべきだ」と話していた。(以下略)」と記された。「図書館オタク」というほどのものかどうかは自分ではわからないが、図書館政策に興味を持っているということで評価していただいたということで理解したい。魅力のある図書館についてわかりやすく紹介した本として、「つながる図書館」(猪谷千香著 ちくま新書 2014年1月)がある。なお、日経グローカルで取り上げられている図書館で、鳥取県立図書館(絶えざる種まきと仕掛け)、瀬戸内市民図書館(市民巻き込み公設公営)、武雄市図書館(二度目の変身を目指す)のほか、猪谷さんが武雄市図書館と比較対象として取り上げたお隣の伊万里市民図書館、武蔵野プレイス、千代田図書館などは今後もその動向を注目したい図書館である。さらに、ニューヨーク公共図書館(「public」が「公立」ではなく「公共」である理由はこの本の重大なテーマ)の活動を活写した菅谷明子著「未来をつくる図書館―ニューヨークからの報告」(岩波新書 2003年1月)は、10年以上前の本だが、日本の図書館の在り方を考える上で、残念ながら今でも必読の1冊だ。ファイナンス 2018.235SPOT

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