ファイナンス 2018年2月号 Vol.53 No.11
36/60

また、税制改革法による、GDP押し上げ効果や財政への影響について、多くのシンクタンクや格付け会社も推計を示しており、まとめると以下の図表7のようになる。加えて図表8にはGDPへの影響についていくつかのグラフを例示した。各機関で推計はばらばらだが、政権が言っているほどの爆発的な成長を示している機関はない。今後、予算決議で示された歳出カットがどの程度実現するのか、税収増や経済成長がどうなるのかについて、財政の観点からも注目が集まっていくだろう。図表7シンクタンクによる見通しTax Foundation*8 (12月18日)【GDP】・〈GDP額〉10年でGDP額について、ベースラインから2.86%押し上げ(平均で毎年0.29%押し上げ)。・〈GDP成長率〉成長率については、2018年は2.01%成長の見通しだったものが、改正によって2.45%と見込まれ、0.44ポイント押し上げる見込み。・〈要因〉GDP押し上げ要因は労働コスト、資本コストの低下。【財政への影響】・税制改革法は約1.5兆ドルの減収となるが、経済成長が1兆ドルに相当し、減収分の多くは取り戻せる。Tax Policy Center*9 (12月20日)【GDP】・〈GDP額〉2018年のGDP額について、(税制改革によって)ベースラインから0.8%押し上げられる見込み。ただし、影響はその後逓減し、2027年、2037年には押し上げ効果はほぼ消滅。・〈要因〉GDPへの影響はほぼ全て需要の増大(時限的に個人の手取り額が増えることと、即時償却による企業の投資が増加すること)による。【財政への影響】・税制改革法は約1.5兆ドルの減収となる。経済成長によって約1,900億ドル増収となるが、それを含めても1兆ドルを超える減収。Heritage財団*10 (12月20日)【GDP】・〈GDP額〉長期的にGDP額を2.2%押し上げる効果(家庭あたり3,000ドル弱の増加)。・〈要因〉労働時間及び資本ストックの増加による。Committee for a Responsible Federal Budget*11 (1月5日)【GDP】・〈GDP成長率〉成長率について、毎年0.08%程度の押し上げ効果。【財政への影響】・税制改革法は約1.0-2.2兆ドルの減収となる。経済成長を加味しても、約1.6-1.7兆ドルの減収が生じる。Penn Wharton Budget Model*12 (12月18日)【GDP】・〈GDP額〉資本収益が高いシナリオの場合は10年で1.1%GDP額への押し上げがある。低いシナリオにおいては0.6%の押し上げ効果。・〈GDP成長率〉資本収益が高いシナリオの場合は平均毎年0.12ポイントの押し上げ効果。低いシナリオにおいては、0.06ポイントの押し上げ。【財政への影響】・税制改革法は約2兆ドルの減収となり、歳出削減分を除いた赤字幅は約2.2兆ドル。歳出削減除きの減収について、資本収益の高いシナリオの場合は、経済成長を加味した減収は約1.8兆ドル、低いシナリオの場合は約2兆ドル。格付け会社による見通しムーディーズ (12月21日)【GDP】・〈GDP額〉長期的にGDP額を0.1-0.2%程度押し上げる効果がある。【財政への影響】・税制改革法によって減収となる分の経済成長が見込まれず、財政赤字が将来的に増大するため、格付けに対してはネガティブな法案。スタンダード&プアーズ*13 (1月8日)【GDP】・〈GDP成長率〉2018年及び2019年について、ベースラインから実質GDP成長率を0.3ポイント程度押し上げる効果。これによって2018年のGDP成長率は2.8%となり、2019年には2.2%となる。長期的にはベースラインである1.8%程度の成長に戻る見通し。【財政への影響】・長期的に成長が大きく見込まれないという前提にたつと、歳出削減によって減収分をバランスさせない限りは、財政赤字は増大し、国民貯蓄は減少し金利は上昇するだろう。*8)“Preliminary Details and Analysis of the Tax Cuts and Jobs Act”, Tax Foundation Special Report (No. 241), Dec. 18, 2017*9)“Macroeconomic Analysis of the Tax Cuts and Jobs Act”, Tax Policy Center, Dec. 20, 2017*10)“The Economic Impact of the Tax Cuts and Jobs Act”, The Heritage Foundation, Dec. 20, 2017*11)“Resources for Tax Reform”, Committee for a Responsible Budget, Jan. 5, 2018*12)“The Tax Cuts and Jobs Act, as Reported by Conference Committee (12/15/17):Static and Dynamic Eects on the Budget and the Economy”, Penn Wharton Budget Model, De. 18, 2017*13)“A Tax Package For The New Year:Its Impact On U.S. GDP Growth”, S&P Global Market Intelligence, Jan. 8, 201832ファイナンス 2018.2SPOT

元のページ  ../index.html#36

このブックを見る