ファイナンス 2018年2月号 Vol.53 No.11
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に考えたものの、夏ごろに民主党から突き付けられた協議の条件が厳しすぎたために、共和党は単独で進むしかなかったと報じている。7税制改革法の概要随分と本題までの前置きが長くなってしまったが、成立した税制改革法「Tax Cuts and Jobs Act」における主な改正点を以下に記す。(1)個人所得税等まず、個人所得税については、制度を簡素化しつつ、所得税負担の軽減を図る観点から、個人所得税率の引下げや多くの控除について見直しが行われた。個人所得税率については、10%から39.6%の7段階の税率となっていたものについて、下院案では4段階に見直すとされていたものの、最終的には上院案を踏襲した形で7段階が維持された。最高税率については、上院案の38.5%よりもさらに引き下げられ、新たな税率は10%、12%、22%、24%、32%、35%、37%の7段階となった。また、従前、納税者本人や配偶者、被扶養者を対象に一人当たり4,050ドルの人的控除が認められていたが、この控除は、概算控除に統合されることとなり、その分、概算控除は、単身者で6,350ドルから12,000ドルまで拡大された。加えて、児童税額控除についても、従前の児童一人あたり1,000ドルから2,000ドルに拡大されており、納税額がない者に対する給付は1,400ドルまで可能とされた。さらに、児童以外の被扶養者一人につき500ドルの税額控除が認められることとなったが、これらの税額控除は、一定の課税所得(夫婦共同申告の場合40万ドル)を超えた高所得者には控除額が逓減される仕組みとなっている。このほか、概算控除との選択で適用が認められている項目別控除については、・医療費控除が一時的に拡充された一方(2017年及び2018年は調整後総所得の7.5%を超過する部分が控除可能)、・州・地方税に係る控除は控除に上限額が設定され(財産税、所得税又は売上税の合計で1万ドル)、図表4〈税制改革法案の審議日程〉【10月26日】2018年度予算決議成立税制改革による減収を含む、今後10年の予算の大枠が示される【9月27日】トランプ政権・米議会共和党による税制改革案公表【11月2日】税制改革法案を提出【11月9日】歳入委員会を通過【11月16日】本会議で可決【11月9日】税制改革法案を公表【11月16日】財政委員会を通過【12月2日】本会議で可決【12月15日】両院協議会が各案調整後の最終案を公表【12月20日】本会議で最終案可決【12月20日】本会議で最終案可決【12月22日】大統領署名を経て成立下院上院(※日程は米国時間)ファイナンス 2018.227「トランプ税制改革」についてSPOT

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