ファイナンス 2018年2月号 Vol.53 No.11
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「平成30年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」(以下「政府経済見通し」という。)が平成30年1月22日に閣議決定された。政府経済見通しは、翌年度の経済財政運営に当たって、政府がどのような基本的態度をとるのか、及び、それを踏まえて経済はどのような姿になるのかという点について示したものである。今回の政府経済見通しでは、現下の経済情勢も踏まえつつ、平成30年度の実質GDP成長率は1.8%程度、名目GDP成長率は2.5%程度となると見込んだところである。実質GDP成長率に対しては、民需、公需、外需ともにプラスに寄与するが、民間最終消費支出(実質)は前年度比1.4%程度、民間企業設備投資(実質)は同3.9%程度と見込まれるなど、民需の寄与度が1.5%程度と最も大きくなっている。以下、平成30年度政府経済見通しの具体的な内容について紹介する。なお、GDPの内訳項目等の詳細な見通しについては、文末の表を参照されたい。1.平成29年度の経済動向平成29年度の我が国経済をみると、アベノミクスの推進により、雇用・所得環境の改善が続く中で、緩やかに回復している。海外経済が回復する下で、輸出や生産の持ち直しが続くとともに、個人消費や民間設備投資が持ち直すなど民需が改善し、経済の好循環が実現しつつある。政府は、持続的な経済成長の実現に向け、「生産性革命」と「人づくり革命」を車の両輪として、少子高齢化という最大の壁に立ち向かうため、平成29年12月8日に「新しい経済政策パッケージ」を閣議決定した。あわせて、追加的財政需要に適切に対処するため、平成29年12月22日に平成29年度補正予算を閣議決定した。雇用・所得環境の改善が続く中、各種政策の効果もあって、景気は緩やかな回復が続くことが見込まれる。物価の動向をみると、原油価格の上昇の影響等により、消費者物価(総合)は前年比で上昇している。この結果、平成29年度の実質GDP成長率は1.9%程度、名目GDP成長率は2.0%程度と見込まれる。また、消費者物価(総合)は0.7%程度の上昇と見込まれる。2.平成30年度の経済財政運営の基本的態度今後の経済財政運営に当たっては、引き続き、「経済再生なくして財政健全化なし」を基本とし、600兆円経済の実現を目指す。少子高齢化という最大の壁に立ち向かうため、「生産性革命」と「人づくり革命」を車の両輪として、2020年に向けて取り組んでいく。世界に胎動する「生産性革命」を牽引し、これを世界に先駆けて実現することを、2020年度までの最重要課題と位置づけ、3年間を集中投資期間として期限を区切り、その実現に取り組む。また、「人づくり革命」は長期的な課題であるが、2020年度までの間に、これまでの制度や慣行にとらわれない新しい仕組みづくりに向けた基礎を築く。成長と分配の好循環により、国民全体が成長を享受できる。「全世代型」の社会保障制度により、子育てや介護に対する不安なしに、誰にでも活躍平成30年度政府経済見通しについて内閣府政策統括官(経済財政運営担当)付参事官(経済見通し担当)補佐 河野 通子ファイナンス 2018.217特集

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