ファイナンス 2018年2月号 Vol.53 No.11
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(イ)事業承継税制の拡充中小企業経営者の年齢分布のピークが60歳台半ばとなり、高齢化が急速に進展する中で、中小企業の円滑な世代交代を通じた生産性向上は、待ったなしの課題となっている。こうした状況を踏まえ、中小企業の代替わりを促進するため、事業承継税制について、10年間の特例措置として抜本的な拡充を行う。具体的には、現行では株式総数の3分の2までとされている猶予対象の株式の制限を撤廃するとともに、納税猶予割合を80%から100%に引き上げることにより、贈与・相続時の納税負担が生じない制度とする。また、雇用確保要件を弾力化するとともに、複数名から最大3名の後継者に対する贈与・相続にも対象を拡大することで、様々な承継パターンに対応した使い勝手の良い制度とする。さらに、経営環境の変化に対応した減免制度を創設して将来の税負担に対する不安にも対応する。(ウ)国際観光旅客税の創設訪日外国人旅行者数が2016年に2,400万人を数え、2017年は2,800万人を上回るなど、訪日観光需要が堅調に拡大する中、観光は我が国の成長戦略と地方創生の大きな柱となっている。今後、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催を踏まえれば、より高次元な観光施策を展開することが急務であるため、日本からの出国1回につき1,000円の負担を求める国際観光旅客税を創設し、「観光先進国」の実現に向けた施策に必要な財源の確保を図ることとした。その税収は、日本人出国者を含む負担者の納得が得られるよう、先進的で費用対効果が高い施策に充てることとしており、具体的には、スムーズな出入国手続きをはじめ、快適に旅行できる環境整備等に充てる。(3)経済社会の国際化・ICT化等への対応(ア)国際課税制度の見直し国際課税については、日本企業の健全な海外展開を支えつつ、国際的な脱税や租税回避に対して効果的に対応していく。このため、「BEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクト」を着実に実施する取組みの一環として、日本に進出する外国企業等の事業利益に対する課税の有無を決める「恒久的施設」(PE)の範囲について、租税回避を防止するための見直しを行う。(イ)税務手続の電子化の推進経済社会のICT化や働き方の多様化が進展する中、税務手続においても、ICTの活用を推進することで、利便性の高い納税環境を整備するとともに、社会全体のコスト削減及び企業の生産性向上を図ることが重要である。こうした観点から、申告データを円滑に電子提出できるよう環境整備を進めつつ大法人に電子申告を義務化するとともに、所得税の確定申告・年末調整手続の電子化を推進する。(4)たばこ税の見直したばこ税については、財政事情が厳しいことを踏まえ、税率を1本当たり1.5円(国・地方合計で3円、1箱当たり60円)引き上げる。税率の引上げは、消費者やたばこ関係事業者への影響に配慮し、1本当たり0.5円(国・地方合計で1円)ずつ3回に分けて段階的に実施する。また、近年急速に市場が拡大している加熱式たばこについては、現行、パイプたばことして課税されているものの、従来のパイプたばことは大きく異なる特性を有しており、製品特性が反映されていない課税方式であることから、加熱式たばこと紙巻たばことの間や加熱式たばこ間に大きな税率格差が存在することが課題となっている。これを是正するため、加熱式たばこの課税区分を新設した上で、その製品特性を踏まえた課税方式への見直しを行うが、開発努力を行った企業や消費者への影響に配慮し、新課税方式への移行は5回に分けて段階的に実施する。10ファイナンス 2018.2特集平成30年度予算特集1平成30年度税制改正(国税)について

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