ファイナンス 2018年2月号 Vol.53 No.11
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受けられるなど、高所得の年金所得者にとって手厚い仕組みになっているとの指摘がなされてきた。こうした点を踏まえ、世代内・世代間の公平性を確保する観点から、公的年金等控除について、公的年金等収入が1,000万円を超える場合の控除額に上限を設けるとともに、年金以外の所得が1,000万円超の年金受給者の控除額を引き下げる。(図3)公的年金等控除の見直し(案)205.503301,000上限設定現行(公的年金等控除の額)(公的年金等の収入金額)(万円)(万円)年金以外の所得1,000万円超の場合年金以外の所得2,000万円超の場合10110100901010120基礎控除へ振替(注)65歳未満の場合、最低保障額(現行70万円)は、・基礎控除への振替により60万円、・年金以外の所得1,000万円超の場合は50万円、・年金以外の所得2,000万円超の場合は40万円となる。[65歳以上の場合](エ)基礎控除の見直し(図4)基礎控除については、所得の多寡によらず一定金額を所得から控除する所得控除方式が採用されているが、高所得者にまで税負担の軽減効果を及ぼす必要は乏しいのではないかとの指摘がなされてきた。このため、控除額を逓減・消失させることとする。具体的には、基礎控除について、所得金額2,400万円超から逓減し、2,500万円超で消失する仕組みとする。(図4)基礎控除の見直し(案)(万円)(控除額)(所得金額)48(万円)2,4002,500※個人住民税の基礎控除額は、それぞれ43万円、29万円、15万円。2,4503216(2)デフレ脱却・経済再生(ア)賃上げ・生産性向上のための税制法人税については、平成27・28年度に行った法人税改革において、課税ベースの拡大や租税特別措置の見直し等で財源を確保しつつ、実効税率を20%台まで引き下げることにより、「稼ぐ力」のある企業等の税負担を軽減することで、積極的な投資や賃金引上げが可能な体質への転換を促してきた。現在、企業収益が好調に推移する中、企業が自己の収益を生産性向上のための設備投資や人材投資に振り向け、持続的な賃上げが可能となる環境を作り出すことが重要である。こうした観点から、新たに賃上げ・生産性向上のための税制として以下の措置を講ずる。〈賃上げ及び投資の促進に係る税制〉・生産性向上のための設備投資、従業員の人材育成等を行いつつ、賃上げ率対前年度3%を達成した企業について、法人税額の20%を限度として、最大で対前年度賃上げ額の20%を法人税額から控除できる措置を講ずる。〈情報連携投資等の促進に係る税制〉・企業の内外におけるデータを連携・高度利活用すること等により生産性の向上を図るなどの取組みを企業が行う際に必要となる投資について、法人税額の20%を限度として、最大で投資額の5%を法人税額から控除できる措置を講ずる。〈租税特別措置の適用要件の見直し〉・所得が増加しているにも関わらず、賃上げと国内設備投資のいずれもほとんど行わない大企業について、研究開発税制等、生産性の向上に関連する租税特別措置の適用を行わない。〈中小企業における賃上げの促進に係る税制〉・中小企業における持続的な賃上げを促すため、賃上げ率対前年度1.5%を達成した企業について、法人税額の20%を限度として、対前年度賃上げ額の15%を法人税額から控除できる措置を講ずる。さらに、賃上げ率2.5%以上等の要件を満たす場合には、税額控除率を10%上乗せする。ファイナンス 2018.29平成30年度予算特集1平成30年度税制改正(国税)について 特集

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