ファイナンス 2018年2月号 Vol.53 No.11
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平成30年度税制改正については、昨年12月22日に「平成30年度税制改正の大綱」が閣議決定された。以下、その概要を紹介したい。1.平成30年度税制改正の基本的考え方安倍内閣はこの5年間、デフレ脱却と経済再生を最重要課題として取り組んできているところであり、雇用が200万人近く増加し、正社員の有効求人倍率が調査開始以来初めて1倍を超え、賃金も2%程度の賃上げが4年連続で実現するなど、雇用・所得環境は大きく改善している。この経済の成長軌道を確かなものとするため、安倍内閣は「生産性革命」と「人づくり革命」を断行することとしており、また、人生100年時代を見据え、誰もが生きがいを感じられる「一億総活躍社会」を作り上げる必要がある。このため、平成30年度税制改正においては、働き方の多様化を踏まえ、様々な形で働く人をあまねく応援する等の観点から個人所得課税の見直しを行うとともに、デフレ脱却と経済再生に向け、賃上げ・生産性向上のための税制上の措置を講じ、さらに、中小企業の代替わりを促進する事業承継税制の拡充、観光促進のための税として国際観光旅客税の創設等を行う。このほか、国際課税制度の見直し、税務手続の電子化の推進やたばこ税の見直し等を行うこととしており、多岐にわたる内容となっている。2.平成30年度税制改正における主な措置(1)個人所得課税の見直し個人所得課税については、一昨年、与党でとりまとめた「平成29年度税制改正大綱」において、働き方の多様化への対応や所得再分配機能の回復等の観点から、見直しに向けた基本的方向性が示されており、今回の改正はそれに沿ったものとなっている。見直しは、大きく分けて4つの柱からなる。(ア)給与所得控除・公的年金等控除から基礎控除への振替(図1)現在の個人所得課税の制度は、「学校卒業後、1つの会社で定年まで勤めあげ、年金生活に入る」といったライフコースを念頭に作られている。しかしながら、近年、例えば、特定の企業や組織に属さず専門知識を活かしてフリーランスとして仕事を請け負う、子育てをしながら会社員時代に培った技能を活かして在宅で仕事を請け負う、高齢者が長年培った能力や経験を活かし起業支援等の形で活躍するなど「働き方の多様化」が進展している。こうした働き方の多様化を踏まえ、様々な形で働く人をあまねく応援する等の観点から、特定の収入にのみ適用される給与所得控除・公的年金等控除を10万円引き下げるとともに、どのような所得にでも適用される基礎控除を同額引き上げる。平成30年度税制改正(国税)について主税局総務課 税制企画室長 寺﨑 寛之ファイナンス 2018.27特集

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