ファイナンス 2017年12月号 Vol.53 No.9
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親の介護です。国内で親御さんが離れて暮らされている方もほぼ同じ話になると思いますし、若い皆さんにはまだあまり実感がないと思いますが、「海外赴任中でも、日本の素晴らしい介護制度と人の心の温かさで、この位出来る」という話として、しばしお付き合いください。私の母は、90近くなっても一人暮らし。海外から安否を知る方法は、電話をかけることなのですが、かけても3回に2回は出ず。母にしてみれば、耳が遠くて出ないだけなのですが、私の方は出てくれるまで、毎日マニラから国際電話をかけ続ける日々を送っていました。そんなある日、2012年12月3日のことです。家に戻ると、母が大腿骨頭骨折で緊急入院という家内からのメール。どうも徘徊中に転んだようで、緊急収容された病院で二日間身元が分からなかったとのこと。折悪しく翌日4日局のクリスマスパーティーのMCだったので、顔で笑って心で泣いて無事MCを終え、翌朝飛行機に飛び乗りました。大腿骨頭骨折自体は、高齢者には多い症例で、私が着いた頃にはチタンで骨折箇所をつなぐ手術の日程も決まっていました。さて、治療方針はいいとして、これから先どうしたものか、皆目見当がつきません。翌日、文字通り藁をもつかむ思いで、とぼとぼと重い足を引きずり(マニラ暮らしの人間には、日本の木枯らしは本当に身に沁みます)、母の住む町の高齢者支援センターを訪れてみました。そこの皆さんの、何と親切だったこと、人の心の温かさが身に沁みました。介護認定が必要なこと、救急病院から次の行く先は病院のケアマネージャーと相談すること等を丁寧にご説明いただき、すっかり明るい気持ちになりました。母は、幸い皆さんのご厚情に助けられて、その後介護施設でにこやかに暮らしています。マニラへは単身赴任していますから、この過程で、文字通り家内には獅子奮迅の活躍をしてもらい、心から感謝しています。海外赴任者にとって、介護のキーワードは、「制度を知る」だと思います。日本の介護制度は素晴らしいので、赴任前にきちんと理解し、単身赴任の場合は留守家族も含めて、赴任中に起こりうることをシュミレーションしておけば、落ち着いて対応可能だと思います。8.バトンは皆さんに、次の目標は財務省保育所の園長先生海外赴任に飛び込んで、Diversityという無限の世界で活躍するバトン、そろそろ皆さんにお渡ししようと思います。海外で長く生活していると、海外では至極当然で、日本ではまだそうなっていないことが結構あります。その一つが、男性も女性も皆、それぞれが自分のやりたい仕事をやり、家庭では力を合わせて子育てをするということ。日本も早くそうなって欲しいと思います。そのために自分が出来ることは何か考えていて、この写真を見ていたら思いつきました。ずばり、財務省保育所(私は、子供が本当に大好き、心から出来て欲しいと思います)の園長先生です。皆さんの小さい時の保育園・幼稚園にもいらっしゃいましたよね、何時もニコニコしている男の先生。この写真見てください。フィリピンの子供達からの笑顔が推薦状です。フィリピン、ホモンホン島で子供達とプロフィール金井 達也1982年大蔵省入省。銀行局、英国留学、熊本国税局を経て現在アジア開発銀行Senior Advisor。留学、アフリカ開発銀行、国際通貨基金、アジア開発銀行で、欧州、アフリカ、アメリカ、アジアの英語圏、フランス語圏で勤務ファイナンス 2017.1237海外ウォッチャーFOREIGN WATCHER連 載|海外ウォッチャー

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