ファイナンス 2017年12月号 Vol.53 No.9
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FOREIGN WATCHER海外ウォッチャー1.海外赴任前の皆さんの悩み、フルコースで経験済みファイナンスのこのページをお開きいただいた皆さん、こんにちは、初めまして。私は、金井達也と言って、1982年に入省した財務省職員、と言ってもご存知の方はほとんどいらっしゃらないと思います。というのも、これまで35年半の公務員人生で、英国留学からアフリカ、ワシントンD.C.、マニラと16年半は海外勤務。特に最近9年半は、アジア開発銀行に勤務していて、東京の財務省に行くのは、年に2、3回ですから当たり前ですよね、よろしくお願いします。これまでの海外勤務16年半で、これから海外勤務される皆さんが直面されるであろうことは、いいことも悪いこともほとんどすべて実体験して来ました。このような機会に恵まれたこと、一緒に歩いて来てくれた家内と三人の子供には心から感謝しています。そんな私が最近聞くのは、海外勤務の希望者が減っているという話。時折日本に帰って話を聞いてみると、十分な情報に基づかないで誤った心配をしているケースが結構あるように思います。そこで、私達家族の経験を書かせていただくことにしました。お伝えしたいメッセージは、「海外勤務は素晴らしいかもしれないから、とりあえず深く考えずやってみてください。これから行く皆さんの心配事は全て誰かがもう体験・解決済みなんですよ」ということです。各章の題名を分かりやすくつけましたので、皆さんのご関心のあるところをお読みください。それから、1982年入省ということは、もう財務省も卒業間近、本稿は心の中を出来るだけ正直に書かせていただきました。2.海外勤務は素晴らしいかもしれないまずは、何故素晴らしいかもしれないか、ご説明しないといけませんね。それは、海外勤務には、diversityという無限の世界の入口があり、そこを是非体験してみて欲しいからです。Diversityは、日本語に訳すと多様性、私なりにさらに訳すと、世界にはいろいろな人がいて、その人の数だけいろいろな考え方がある、ということでしょうか。日本の人口は、1.27億人、世界の人口は、74.37億人、少なくとも58.6倍のいろいろな考え方がある訳です。このdiversity、難物なのは、1.実際に身を置かないと決して理解出来ず、日本での疑似体験は不可能、2.向き不向きは、放り込んでみないと分からない、ということにあります。実際に身を置かないと分からないのは、あるものを見たときの海外の人の反応というのは、そもそも日本で暮らして来た我々のこれまで全ての経験の範囲外なので、想像しようがないということですが、マニラでの失敗例です。自分が主催のミーティングに5分遅れてきた女性の部下が二人ほど。ちょっと強い調子で、「What time is it?」と皆の前で言いました。二、三ヶ月後の局のミーティングで、「我が局には威圧的な上司がいる」と女性達が発言。ひどい人がいるな、と思って聞いていましたが、何と後から聞いたら私のこと。フィリピンでは、相手が1000%悪くても人前で怒ってはいけません。彼女らからすると、多分、私のことが土俵に土足で上がっている人のように見えたんだと思います。向き不向きは放り込んでみないと分からない、海外勤務に飛び出そう!Diversity、その無限の世界へアジア開発銀行Senior Advisor 金井 達也ファイナンス 2017.1231連 載|海外ウォッチャー

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