ファイナンス 2017年12月号 Vol.53 No.9
27/56

ニイ「ガタ」、「トキ」、書いてみませんか?新潟県と聞いて、どんなイメージが思い浮かぶでしょうか。コメ、日本酒、雪・スキー、○○さん…。この連載では、表題の「ガタ」、「トキ」の漢字の書き方のように、知ってそうで知らない新潟の特徴に触れながら、日本の明るい未来の可能性を探っていきたいと思います。さて、タイトルの人口日本一。今は当然東京都ですが、江戸末期から明治半ばまでは、新潟県(相当する区域)が日本一だったのです。現在の国勢調査に相当する統計では、明治21年、全人口3,963万人のうち、新潟県が166万人で第一位でした。一方東京府は135万人でした。当時の日本の主要産業、圧倒的な働き口は農業でしたし、最大輸送路は北海道と大阪を日本海側で結ぶ北前船西廻り航路(最大寄港地が新潟)、江戸幕府や明治政府の財政を支えた佐渡金銀山の存在などを考えると、納得できる気がします。明治31年には東京府が日本一になりましたが、新潟県は出稼ぎ、移住により人材輩出の役割も果たしてきました(現在も毎年6,000人程度が県外転出超過となっています。これはこれで課題なのですが…)。財務省内にも配偶者や親が新潟県人の職員はけっこういますし、みなさんもきっと新潟ゆかりの人が周囲にいると思います。今でも、神社の数に人口日本一の名残が見られます。集落毎に信仰していたからか、全国的に人口と相関関係が高いのですが、新潟県が4,743社と圧倒的に日本一です(平成27年末の宗教法人数ベース。2位は兵庫県の3,857社)。ちなみに、今や大阪府を抜いて人口第二位の都道府県となった神奈川県が、新潟県の人口を抜くのは昭和14年になってからです。現在80歳代の方々が生まれた頃は、新潟人のほうが多かったんですね。AI、IoTなど、変化の激しい時代と言われますが、世の中は常にダイナミックなんだなあと思います。いつの世も、過去の栄光や前例にとらわれない柔軟な発想が大切ですね。せっかくなので、現在の産業のことも。精密加工や金属加工など、ものづくりの高い技術を持つ企業が集積し、世界シェアトップ企業も数多くあります。しかし、ここでは2次産業の中でもあえて鉱業を。新潟県は、天然ガスの生産が日本一なんです。パイプラインを通じて、いまも南東北、関東に都市ガス等を供給しています。寒い季節、熱々の料理や暖かい部屋に触れたら、ちょっと新潟を思い出してみて下さい。また、新潟県は、開業率が4.9%と、全国43位の低さです(平成26年経済センサスベース。全国平均6.5%)。起業が少ないのです。関係者で協力しながら起業しやすい環境づくりに力をいれていますが、じゃあ産業が活発ではないかというとその捉え方も一面的。金物問屋からオートキャンプメーカーになったり、墨壺車製造から高級箸製造へといったように業態変更しながら続いている企業が多く、長年事業体を継続している企業が多い(廃業率が低い:新潟県は全国41位の低さ)のです。開業率が低い理由は、複合的と言われていますが、その一つとして、まことしやかに言われているのが「真面目で粘り強い県民性」。世界各国との比較では日本人一般に言われる特徴ですし、数字で表しにくいのですが、いくつかの指標で比較してみると、離婚率が全国46位の低さ(人口千人あたり1.31件。平成28年)。47都道府県の開業率と離婚率の相関は高いです(ちなみに高率は沖縄、大阪等、低率は山形、秋田等)。さて、みなさんの周りにきっといるであろう新潟ゆかりの人は、このキャラクター、当てはまるでしょうか?(つづく)(参考文献)新潟県史、新潟県のあゆみ(新潟県)、総務省統計局HP新潟県産業労働観光部長(元財務省広報室長) 佐久間 寛道第一回 人口日本一???ファイナンス 2017.1223ニイ「ガタ」、「トキ」、書いてみませんか?連 載|ニイ「ガタ」、「トキ」、書いてみませんか?

元のページ  ../index.html#27

このブックを見る