ファイナンス 2017年12月号 Vol.53 No.9
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国際金融アーキテクチャについては、世界経済の持続的成長の実現のためにその改善が不可欠であるとの観点から、IMFが十分な資金基盤を有することが重要であること、今後行われるクォータ見直しの結果増資を行う場合に用いる計算式には、加盟国によるIMFへの自発的資金貢献を適正に反映すべきであること、等を主張した。また、国際課税については、BEPS(税源侵食と利益移転)プロジェクトの進展等について議論が行われた。我が国からは、BEPS合意の適時の一貫した広範な実施の重要性や、経済のデジタル化への対応の必要性、税の透明性向上や発展途上国の税の能力構築支援における国際協調の重要性等について述べ、国際課税は来年以降も主要テーマになるだろうと指摘した。2G7財務大臣・中央銀行総裁会議(2017年10月12日)今回の年次総会の機会には、G7財務大臣・中央銀行総裁会議も開催され、北朝鮮に対する制裁や、金融セクターにおけるサイバーセキュリティ等について議論が行われた。まず、北朝鮮による大量破壊兵器や弾道ミサイルの開発等の一連の行動が、国際平和と安全保障に対する重大な脅威となっているところ、北朝鮮の収入源を断ち、また北朝鮮による国際金融システムの濫用を防ぐことにより、北朝鮮に対して最大限の経済的圧力をかける必要がある、という認識が共有された。また、サイバーセキュリティについては、官民のパートナーシップの強化のため、金融インフラを管理・運営している民間の代表者を招き、最近の経験やサイバーセキュリティ強化の方法について議論を行った。3国際通貨金融委員会 (2017年10月13-14日)国際通貨金融委員会(注)においては、世界経済の動向等について議論が行われた。(注)国際通貨・金融システムに関する問題についてIMFに助言及び報告することを目的として1999年に設立。以降、春・秋の年2回開催。世界経済については、回復基調が続き、見通しは力強さを増している一方、潜在成長は多くの国で依然として弱いとして、足元の経済好転という機会を活かし、構造改革を通じて潜在生産力を高めるべきであるという認識が共有された。*3我が国からは、アベノミクスの成果が着実に上がってきた結果、日本経済のファンダメンタルズは堅調であること、また、現在の経済成長を持続可能なものとするため、働き方改革や生産性の向上、幼児教育・高等教育の負担軽減やリカレント教育の拡充により、少子高齢化を克服していくこと、を表明した。公表されたコミュニケにおいては、「全ての政策手段を個別にまた総合的に用いる」、「為替レートの過度な変動と無秩序な動きは、経済及び金融の安定に対して悪影響を与え得ることを認識する」等、我が国の主張に沿う記述が引き続き盛り込まれた。また、我が国がIMFによる政策助言の整合性の確保を求めてきている資本フロー管理政策について、政策助言の効果的かつ整合的な実施に期待が表明された。4世銀・IMF合同開発委員会 (2017年10月14日、ワシントンD.C)世銀・IMF合同開発委員会(注)においては、2030年に向けた世銀グループのビジョン(Forward Look)の進捗状況、開発支援のための民間資金動員、世銀グループの傘下である国際復興開発銀行(IBRD:International Bank for Reconstruction and Development)と国際金融公社(IFC:International Finance Cooperation)の投票権見直し等について議論が行われた。(注)開発をめぐる諸問題について世界銀行・IMFに勧告及び報告を行うことを目的として1974年に設立。以降、春・秋の年2回開催。*3)ラガルドIMF専務理事は、1962年にケネディ米大統領(当時)が行った議会演説中の、「太陽が出ている間に屋根は修理しなければならない」という言葉を頻繁に引用していた。20ファイナンス 2017.12SPOT

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