ファイナンス 2017年12月号 Vol.53 No.9
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構築の支援(囲み記事参照)、近年開発が進んだ携帯型ラマン分光計を用いた指定薬物と新たな危険ドラッグ等への対応を紹介した。また、関税局監視課から、輸入申告件数や旅客数が伸び続けているといった日本の置かれた状況と水際取締の重要性、2020年の東京オリンピックを見据えた取組などの紹介を行った。3おわりに国境取締に関する技術革新は、革新のスピードが速いだけではなく、幅広い分野の技術が関係することから、このような取組が継続的に行われることを通じて、人的なネットワークが維持・強化され、常に情報をアップデートできる素地を形成することは極めて重要である。この点、2年ぶりに開催された今回の技術革新フォーラムにおいて、単に最新技術が紹介されただけではなく、様々な形で関係者間の対話がなされたことは大きな成果であった。また、日本で初めての開催であり、日本企業の優れた通関情報処理システム、世界最高水準の顔認証技術、高性能高品質な質量分析器などの技術に参加者から高い関心が示されたことからも、日本で開催した意義は大きかったのではないかと考えている。(文中、意見にわたる部分は、あくまでも筆者の個人的見解であり、財務省としての見解を示すものではない。)覚醒剤プロファイル分析覚醒剤プロファイル分析とは、押収された覚醒剤の科学的特徴を化学分析し、過去の事犯の分析結果との比較・照合や覚醒剤合成に関する内外の化学的知見を踏まえ、押収された覚醒剤の原料、製造方法、密輸ルート、他の事犯との関連性を推定し、税関における水際取締に貢献するものである。分析に当たっては、覚醒剤を構成する元素、即ち炭素、窒素、水素の安定同位体比や覚醒剤に含まれる微量の不純物の測定など最新の化学分析技術を用いている。この覚醒剤プロファイル分析から、本邦に密輸されようとした覚醒剤は大きく3つに類型化できると考えられる。具体的には、平成23年から平成28年の間に関税中央分析所において分析した覚醒剤について、炭素・窒素の安定同位体比と仕出地を整理したところ、「メキシコ型」、「中国型」、「アフリカ・欧州・インド型」に類型化できることが判明している。〈写真資料4〉パネルディスカッション安定同位体比分析による覚醒剤の科学的特徴―平成23年から平成28年の間に関税中央分析所において分析された覚醒剤―メキシコ型中国型中国アフリカメキシコ欧州タイ-40.0-35.0-25.0-30.0-20.025.020.015.010.05.00.0-5.0-10.0-15.0-20.0δ15N(‰)δ13C(‰)アフリカ・欧州・インド型(注)関税中央分析所調べ18ファイナンス 2017.12第6回WCO技術革新フォーラムの開催についてSPOT

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