ファイナンス2017年11月号 Vol.53 No.8
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連 載|日本経済を考える8.まとめ本稿では、世帯主年齢別に『国民生活基礎調査』を用いて、2004年から2010年までの所得格差について等価可処分所得の変動係数に対する所得要素の寄与度分解を行った。分析を通じて、世帯主の就労収入が所得格差の拡大への寄与が一番大きく、特に20~59歳及び60~64歳では格差拡大への寄与度が大きいことが分かった。世帯主の就労収入の寄与度は、どの世代でも先行研究で用いた『全国消費実態調査』の値よりも『国民生活基礎調査』の値が大きかった。『国民生活基礎調査』では世帯主の就労収入がゼロの世帯数が多く含まれており、分析の精度を高める上では、それらを除外して考慮を行った分析についても行うべきである。世帯主の就労収入がゼロの世帯数の合計は、2004年が8,478世帯、2007年が8,154世帯、2010年は9,535世帯も存在しており、サンプル数から鑑みて無視できない存在である。世帯主の配偶者の就労収入の寄与度は、『国民生活基礎調査』、『全国消費実態調査』共に20~59歳の現役世代で高い。配偶者の就労収入の果たす役割は、現役世代での寄与が大きく、共働きをしているか、また正規雇用なのが重要となって図10 世帯主年齢20~59歳の2人以上世帯の所得要素の寄与度分解(全国消費実態調査)20042009-0.200-0.1000.3840.3480.1320.1250.0540.0640.0230.0290.0160.020-0.155-0.1330.0000.1000.2000.300税・社会保険料現金給付その他資産収入他の世帯員の収入その配偶者の収入世帯主の収入0.4000.500出所:四方・田中(2016)をもとに筆者作成。図12 世帯主年齢65歳以上の2人以上世帯の所得要素の寄与度分解(国民生活基礎調査)200420072010-0.300-0.200-0.1000.2750.4000.3570.0720.1100.0770.1820.1750.2000.3070.3540.2010.0680.0650.072-0.174-0.214-0.1620.0000.1000.2000.300税・社会保険料現金給付その他資産収入他の世帯員の収入その配偶者の収入世帯主の収入0.4000.5000.6000.700出所:国民生活基礎調査各年度個票より筆者作成。図9 世帯主年齢20~59歳の2人以上世帯の所得要素の寄与度分解(国民生活基礎調査)200420072010-0.300-0.200-0.100-0.178-0.196-0.1340.0120.0100.0090.0550.0530.0470.0620.0590.0340.1560.1500.1350.5720.5670.5470.0000.1000.2000.300税・社会保険料現金給付その他資産収入他の世帯員の収入その配偶者の収入世帯主の収入0.4000.5000.6000.700出所:国民生活基礎調査各年度個票より筆者作成。図11 世帯主年齢60~64歳の2人以上世帯の所得要素の寄与度分解(国民生活基礎調査)200420072010-0.300-0.200-0.1000.5570.6700.5210.1580.1170.0910.0820.0900.0940.2480.2060.166-0.0200.0300.018-0.243-0.222-0.1890.0000.1000.2000.300現金給付その他資産収入他の世帯員の収入その配偶者の収入世帯主の収入0.4000.5000.6000.700税・社会保険料出所:国民生活基礎調査各年度個票より筆者作成。ファイナンス 2017.1157シリーズ 日本経済を考える71

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