ファイナンス2017年11月号 Vol.53 No.8
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重要な資格要件の例として、高度人材ポイント制による出入国管理上の優遇制度がある。ポイントが70点で優遇されるが、最高難度のN1は15ポイント、N2でも10ポイントが加算。また、多くの大学等で受験資格として採用。さらに、医師国家試験においても、日本の中学及び高等学校を卒業していない者は、日本語能力試験N1の取得を受験資格の認定基準要件の一つとしている。後述の経済連携協定に基づく看護師・介護福祉士の候補者の受入に際してもN3以上の取得が訪日の要件。4各国政府関係機関による語学教育語学教育は、我が国に限らず、各国の国際文化交流の重要な柱。語学教育はその国の文化の深い理解を得るには有効なツールだからだ。英国のブリティッシュ・カウンシル、フランスのアンスティチュ・フランセ、ドイツのゲーテ・インスティトゥートには長年の語学教育の実績がある。例えば、英国のブリティッシュ・カウンシルは、英国の公的な国際文化交流機関。東京では飯田橋にあり、英語教育が事業の柱。英語の力は圧倒的に強く、自前の試験(IELTS)のほか、実施体制のノウハウを活用して外国の試験代行サービスや日本の大学などから英語教育事業を受託。アングロサクソン系っぽく、施設は至ってこじんまりとして、機能的だが、語学教室は飯田橋のお堀が見える側にあり、お花見の季節には特等席になりそうだ。次にフランス。アンスティチュ・フランセが政府公式機関として仏語講座やフランス発の文化、思想、学問を発信。文化イベントに力を入れていて、2万5000人近くの受講生を抱え、年間300件以上の文化イベントを企画。飯田橋にあるアンスティチュ・フランセはいかにもフランスっぽい、しゃれたつくり。語学教室のほか、中庭にはフランス人のギャルソンがサーブしてくれるレストラン、映画館や図書館もあり、フランス映画の上映会やお祭りなどを頻繁に開催。東京にフランス文化圏の異空間を形成している。アジアでも、中国や韓国は自国語教育に力を入れており、海外での政府機関による自国語教育の取り組みは、日本語は運営箇所数31か所、受講者数20,878人だが、中国語(孔子学院)は、運営箇所数1,586箇所、受講者数1,550,000人と二桁違うし、韓国語(世宗学堂)でも174か所、43,308人と日本を上回る現状。5海外の日本語教育の動き最近の海外での日本語教育の動きをまとめると、まず、初等教育において、日本語教育が拡大傾向。前述のとおり、教育制度改革などにより上位3か国(中国、インドネシア、韓国)で減少している一方、多くの国では増加し、国・地域毎に傾向が多様化。自国語講座運営の状況(運営か所数)(受講者数)1,586か所174か所31か所1,550,000人43,308人20,878人0200,000400,000600,000800,0001,000,0001,200,0001,400,0001,600,0001,800,00002004006008001,0001,2001,4001,6001,800孔子学院世宗学堂国際交流基金出典:国際交流基金34ファイナンス 2017.11SPOT

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