ファイナンス2017年11月号 Vol.53 No.8
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1はじめにおととしあたりだったか、何気なく見ていたお笑い番組、R-1グランプリ(吉本興業主催のピン芸人コンクール)。ホワイトボードに漢字を書き、「Why Japanese people!」と絶叫する白人の大男。R-1グランプリに外国人で初めて、しかも芸歴最短記録(4か月)も更新して決勝進出。この男「厚切りジェイソン」。飛び級で大学入学し、現在、IT企業の役員との二刀流芸人。2005年に19才で来日したときに観た「エンタの神様」の面白さにはまり、お笑い芸人をやりたいと思い再来日。芸人デビューし、今日に至る。「英語でしゃべらナイト」などでおなじみのパックンこと、パトリック・ハーランは、23歳で日本に来るまでは、日本語どころか、日本についてもあまり知らなかったという。日本に来たら日本人がいっぱいいるから日本語を「喋らないと」と思ってゼロから日本語を学び始めたという。彼らは日本語が上手いが、どれくらい上手いのか。年に2回、世界中で日本語能力試験が実施されている。厚切りジェイソンは、再来日するまでに独学で日本語を勉強し、2008年に日本語能力試験2級、翌年には最高難度の1級を取得。パックンも2年間の独学で1級を取得、更に漢字能力検定準一級という、やくみつるみたいな人でない限り日本人でも非常に難しいレベルにチャレンジし、こちらは玉砕したという。2日本語学習者数彼らもこれだけ日本語が上手くなるには、きっと相当勉強しているはず。ピンは厚切りジェイソンやパックンのような上級者から、キリは挨拶程度の人まで、実際、様々なレベルの人が世界中で日本語を学習している。なぜ日本語を学習しているかというと、日本語そのものへの興味が62.2%と一番、5番以下で「将来の就職」42.3%、「日本への留学」34.0%と実利的な目的を上回る。「Youは何しに日本へ?」などのテレビ番組を見ていると、確かに日本に興味を持ってやってくる人が多いのかも。ただ、高等教育に絞ると、より実利的な目的が多い。では、日本語学習者はどれくらいいるのか? 2015年に、教育機関に属して日本語を勉強している学習者は、世界中で366万人。日本語教師は6万4千人、教育機関は1万6千件と、調査開始の1979年と比べ、それぞれ、28.7倍、15.6倍、14.1倍に増加。ここには独学で勉強した人は入らないので、学習者は実際はもっと多い。地域別だと、アジアの学習者が全体の8割、うち東アジア(中国、韓国、台湾、香港、マカオ)で48.2%、インドネシアを筆頭に東南アジアで29.9%、南アジアで1.1%。次が日本との経済関Spot05世界中から87万人が応募!厚切りジェイソンやパックンも受けた 日本語能力試験と日本語教育国際交流基金  吾郷 俊樹Photo by Kenichi Aikawa「日本語は日本に来てからゼロから学びました。」と語るパックン30ファイナンス 2017.11SPOT

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