ファイナンス2017年11月号 Vol.53 No.8
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(2007年~2012年:フランス大統領)、アラン・ジュペ(1995年~1997年:シラク大統領の下で首相)、フランソワ・フィヨン(2007年~2012年:サルコジ大統領の下で首相)など錚々たる面々が並ぶ。実は、今、マクロン政権で経済財務大臣を務め、今回紹介する2018年予算法案を記者会見で説明したブリュノ・ル=メールもこの予備選挙に立候補していた。予備選挙は第1回投票が11月20日に行われた。事前には、世論調査で人気のあったジュペ候補が有力と思われていたが、1位はフィヨン候補、2位がジュペ候補となり、この2人が11月27日の決選投票で争い、その結果、フィヨン候補が大統領選挙の右派統一候補となった。一方の左派の予備選挙だが、同年12月1日、左派の予備選挙の立候補受付が始まる日、2期目に当然立候補すると思われていたオランド大統領は会見を開き、支持率の低下などを理由に、大統領選挙への立候補を取りやめると表明。2017年1月22日に実施された第1回投票は、マニュエル・ヴァルス(2014年~2016年:オランド大統領の下で首相)、ブノワ・アモン(2014年:オランド政権下で教育大臣)、アルノ・モントブール(2012年~2014年:オランド政権下で経済大臣)などの間で争われ、アモン候補とヴァルス候補が1月29日の決選投票に進出、アモン候補が勝利し左派統一候補となった。このように右派はフィヨン候補、左派はアモン候補が大統領選挙に立候補することになったが、フィヨン候補は2017年1月以降、夫人を議員秘書として架空雇用していたのではないかとの疑惑が持ち上がり、一時期は大統領選挙への立候補も危ぶまれるほど劣勢に立たされ、一方のアモン候補はそもそも知名度が低いことが災いし支持を拡大できずにいた。伝統的に大統領を輩出してきた右派、左派がいずれも厳しい状況に陥る中、2016年11月16日にようやく大統領選への立候補表明をしたマクロン候補と、極右国民戦線の党首であるマリーヌ・ル=ペン候補、さらには急進左派で一定の支持層がいるジャン=リュック・メランション候補の3人の大統領候補に注目が集まることとなった。(参考)大統領選挙におけるマクロン候補の公約(経済政策)*2○5年間で600億ユーロの規模の歳出削減を行う一方で、職業訓練、エネルギー転換、医療、農業、行政電子化、地方交通の分野に合計500億ユーロの公共投資を行う。○GDP比2%相当を目指して国防予算を増額する。○家計の購買力向上策として、一般社会税の増税により財源を確保した上で健康保険料・失業保険料被用者負担分を廃止する。○法人税率を5年間で欧州平均の25%まで引き下げる。○金融所得に対しては税率を統一し、30%のフラットタックスを課税する。○財政赤字対GDP比を2017年から3%以内にする。42017年春の大統領選挙今までの大統領選挙には見られなかった、こうした複雑な構図のまま、2017年4月23日、大統領選挙の第一回投票が行われた。結果は、マクロン候補が第1位(得票率24.01%)、国民戦線ル=ペン候補が第2位(得票率21.30%)、右派フィヨン候補が第3位(得票率20.01%)、急進左派メランション候補が第4位(得票率19.58%)、左派アモン候補が第5位(得票率6.36%)となり、右派・左派のいずれも決選投票には残れないという第5共和制始まって以来の事態となった。決選投票はマクロン候補とル=ペン候補で闘われることになったが、上記の通り第一回投票では、マクロン候補とル=ペン候補の間にはそれほど大きな得票率の差はなかった。フィヨン候補と*2)大統領選挙におけるマクロン候補以外の各候補の主張については、ファイナンス(2017年4月号)の海外ウォッチャー「フランスの現状―激動の時代における大統領選挙を控えて」(太田原和房前在仏日本国大使館参事官、足利貴聖在仏日本国大使館一等書記官)に譲る。20ファイナンス 2017.11SPOT

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