ファイナンス2017年11月号 Vol.53 No.8
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捉え算数科の観点も含めた指導ができるよう実際の遊具等の大きさを考慮して作成されたものである。また、カードには設置に必要となる費用(「○○コイン」)が表示されており、各班「100コイン」の予算の範囲内で自由に遊具や施設を設置できるというルールだ。開始早々、思い思いに遊具や施設を配置した児童たちは、100コインの予算を大きく超えていることに気付く。そこで講師に「100コインじゃ収まらないけれどどうしたらいい?」「150コイン使ってはだめなの?」といった質問をするものの、講師からは100コインの範囲内でどうしても必要なものをみんなで話合うように指示を受ける。そこで、各班では「なぜその遊具・施設が必要なのか。」「他の遊具で代替することはできないか。」といった議論がなされていった。公園に時計を設置するかどうかについて、「時計が欲しいけれど、今はみんなスマートフォンで時間を見るから、なくてもいい?」、「でも小さい子はスマートフォンも持ってないからやっぱり必要」といった声や、「トイレは絶対に必要」とする意見に対して「トイレは近くにコンビニがあればいらないかも。」といった鋭い意見が出るなど、多面的で深みのある議論が展開された。多くの班で最初に設置されたのは、遊具ではなく、「防災倉庫」であった。これは公園調査の中で公園が災害時の避難場所に指定されていることが話題に挙がっており、その役割の重要さに気付いた児童が自分の楽しさよりも社会や他者への配慮を優先した結果と言えるであろう。授業半ばで一度作業を中断し、いくつかの班が現状や悩みを発表し、全体での意見交換が行われた。他の班のアイデアや悩みを聞いたうえで再び作業に入った児童の議論は益々白熱していく。「みんな一旦落ち着こう!」「計算は合っているか?」「もうこれ以上減らせない!」といった声が聞こえ、その様子はさながら予算編成に取り組む財務省職員であった。公園の完成は次回授業に持ち越されることになり、最後に児童たちから講師と参観者に向けて「ありがとうございました!」という会場全体に響き渡る大きな挨拶をもって公開授業は終了した。公園を題材にすることで、児童たちはこれまでの経験を踏まえた積極的な考察・議論を行うことができた。また、幼児から高齢者まで様々な利用者に思いを馳せ、みんなのためにという視点を持ち、みんなで考えながら決定する公園づくりは、集団や社会理想の公園を目指して議論積極的に発表する児童と西嶋良教諭(中央)授業後青山講師へ質問10ファイナンス 2017.11SPOT

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