ファイナンス2017年11月号 Vol.53 No.8
12/66

また「投資有価証券」の増加について、業種別にみると、製造業では「自動車・同付属部品製造業」(3.3%ポイント)など、非製造業では「純粋持株会社」(46.8%ポイント)などが寄与しています。「投資有価証券」には、主に海外現地法人なども含めた関係会社の株式などや、長期の資産運用を目的とした株式・債権・投資信託などの有価証券が計上されます。「投資有価証券」の増加については、「自動車・同付属部品製造業」などを中心に、業務提携を睨んだ異業種も含めた資本提携や、グループの再編・連携強化(出資比率の引き上げ)の動きがあったこと、純粋持株会社制に移行する企業が増加(関係会社の株式が「投資有価証券」として計上される)したことが寄与したものとみられます。一方、設備投資項目である「有形固定資産」は9.2兆円減少しました。なお、流動資産の「その他」の増加(57.5兆円増加)は「リース業」におけるリース投資債権の増加 、固定資産の「その他」の増加(33.5兆円増加)は「純粋持株会社」における関係会社などへの長期貸付金の増加などが寄与しているとみられます。これらを踏まえると、企業が「経常利益」の増加により「利益剰余金(内部留保)」を積み上げる一方で、国内設備投資に慎重になっている構図が窺えます。また資産面では、「現金・預金」や「投資有価証券」が増加しており、「投資有価証券」の増加については、海外成長企業の買収や企業の成長に資する資本提携や再編の動きもあるとみられますが、より一層の成長のための投資が増えることが期待されます。図表8 企業内部留保率(注)※9 鉱工業生産指数(経済産業省)によると、薄型テレビなどが含まれる「民生用電子機械」の生産指数は平成18年度(87.7ポイント)から28年度(39.0ポイント)に半減しています。(指数の基準改定があったため、月単位の接続指数を用いて、年度数値を作成。)※10 (参考原油価格(WTI))平成18年度平均64.96ドル/バレル、28年度平均47.88ドル/バレル※11 近年の「売上高」と「売上原価」の減少には、「卸売業」を中心とした会計表示方針の変更 (代理人取引などにおける総額表示から純額表示への変更)の影響もあるとみられます。※12 年次別法人企業統計調査の結果によれば、平成17年度調査で781社であった「純粋持株会社」は28年度には3,211社に急増しています。一般的に、専ら子会社などに対する管理機能を担う「純粋持株会社」では受取配当金は営業収益(売上高)に計上されますが、「営業外収益」に計上される事例もみられます。昭和555963平成4812162024(年度)大企業中堅中小0.05.010.015.020.025.030.0(%)(注1)大企業は資本金10億円以上、中堅企業は資本金1億円以上10億円未満、中小企業は資本金1千万円以上1億円未満。(注2)内部留保(利益剰余金)比率は、利益準備金、積立金、繰越利益剰余金の合計が総資本に占める割合。(出所)内閣府「平成29年度 年次経済財政報告」 http://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je17/index_pdf.html8ファイナンス 2017.11特集平成28年度年次別法人企業統計調査結果と調査からみた企業動向

元のページ  ../index.html#12

このブックを見る