ファイナンス2017年11月号 Vol.53 No.8
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ます。「営業外収益」の増加の背景には、受取配当金の増加が寄与しているものとみられます。海外事業活動基本調査(経済産業省)によれば、直近(平成27年度)の海外現地法人からの受取配当金は、比較可能な平成19年度比3.4倍の3.6兆円(大企業1,082社の単純集計)に達しています。うち3分の1超を「自動車・同附属品製造業」を含む「輸送機械」が占め、その多くが「営業外収益」に計上されているものとみられます。また専ら子会社などに対する管理機能を担う「純粋持株会社」も設立が相次いでおり※12、受取配当金の増加に寄与しています。内閣府の『平成29年度 年次経済財政報告』においても、「近年の企業収益の特徴として、企業全体の収益力を示す経常利益が、本業の儲けである営業利益を上回って増加していることが挙げられる」と指摘しており、平成12年以降では「債務残高の減少と金利の低下によって支払い利息が大幅に減少する中、子会社からの配当などの受取利息等の増加により収益が底上げされている」と述べています(図表5参照)。一方で、「こうした収益力の強化の度合いは、企業規模によって差」があり、「リーマンショック後の経常利益は、大中堅企業が中小企業を大幅に上回って伸びている」と指摘しています(図表6参照)。資産では現金・預金や 投資有価証券が増加次に貸借対照表について、企業の内部留保である「利益剰余金」をみると、平成28年度は406.2兆円と、18年度の252.4兆円に比べ、153.9兆円増加しています(図表7参照)。業種別にみると、製造業では「自動車・同付属部品製造業」(4.0%ポイント)など、非製造業では「純粋持株会社」(11.2%ポイント)など、ともに経常利益の増加が大きい業種が寄与しました。なお、内閣府『平成29年度 年次経済財政報告』では、前述の通り、経常利益については大中堅企業と中小企業の差が述べられていましたが、利益剰余金については、「大企業だけでなく、中小、中堅企図表5 営業外損益の内訳-12-8-4048(兆円、SA)その他の営業外収益その他の営業外費用支払利息等受取利息等営業外損益(折線)(年)29272217127平成2(注)財務省四半期別 法人企業統計調査により作成されている。(出所)内閣府「平成29年度 年次経済財政報告」 http://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je17/index_pdf.html6ファイナンス 2017.11

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