ファイナンス 2017年10月号 Vol.53 No.7
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例えば、本の開き方もそうです。西洋と日本では逆ですね。皆さん、ワイングラスを回すふりをしてみてください。時計回りに回した方。反時計回りに回した方。これもそう。ひらがなは、右回りなので、時計回りに回してしまいがちですが、ワインは西洋で産まれたもので西洋のルールに則っているので左、反時計回りなのです。日本人は逆回しにしてしまいますよね。その国の文字の動きや癖が暮らしに影響を与えます。本来は、ワインが万が一こぼれたとしても自分にかかるように左回りがルールだそうです。例えば、何かを動かすときに時計回りにすると、彼らは理解が難しいのです。お花を生けるときも、こういう木があれば、反時計回りの動きの中に、一つだけ時計回りを入れてあげると彼らが理解できはじめる、きっかけになるそうです。(3)左右対称と左右非対称日本は、禅寺もそうですし、絵もそうですが、左右非対称を美とします。しかし西洋は、左右対称でないと「見えない」そうです。西洋のお庭はどこに行っても左右対称で、建物も、お家なども対称的に作られているものが多いと思います。それだけではなく、絵もそうですよね。こちら側に木があるとして、反対側には種類や形の違う木がある。日本の場合は、余白に小さいりんごがぽつりひとつあるだけで、西洋人からみて「わかる」という領域にまではたどり着かないのです。例えば、今食べているような熟成されたチーズが日本に入ってきたときに、いきなり熟成でしたら食べられなかったと思うのです。ワインも同じで、熟成されたワインが日本に入ってきたとき、私たちには味わうことができなくて、炭酸で割ったり、飲みやすいように何かしらしなくてはいけなかったかと思います。私たちが子供のころに食べていたチーズはとても食べやすく、癖のないものでした。日本を世界に発信するとき、余白や間を理解してもらえるのはフランスぐらいでしょうか。それ以外の国にはある程度左右対称にして、その中に少し非対称を作るというところから、今はやらないといけないかなと実感しています。子供のころに食べた、あの食べやすくて癖のないチーズから始めて、徐々にそれを熟成されたものに変えて、彼らがその味に慣れるよう、彼らをわかるところまで成長させていくことが必要かなと思っています。(4)直線/簡素と曲線/デコラティブ他には、直線的なものが非常に日本的なのだそうです。特に格子。非常に簡素です。一方で西洋は非常にデコラティブで、曲線美を美しいとします。例えば、今この会場に飾られている絵はそこに一つだけだと思うのですけれども、ルーブル美術館などに行かれたことがある方はお分かりになるかと思いますが、西洋ではこのように余白や何も飾らないということに、恐怖に感じるそうです。ルーブル美術館でも上下左右にびっしり絵を飾っていますね。中東もそうです。例えば、その国のどなたかのお家に伺ったときに家族写真を壁中にびっしりと飾っていたことを見たことがあると思います。余白に対する恐怖心、私たちが余白を美と見るのと同じように、彼らは密接したものを美と感じるようです。ですので、西洋のお客様をお招きするときには、できるだけ余白をなくして、ぎゅうぎゅうに飾っています。ぎゅうぎゅうだと感じるぐらいがちょうどいいようです。(5)矢印の違いこれから2020年に向けてたくさんの外国人を迎え入れるにあたり、矢印に対する認識が異なっていて、これは大変です。右と左は間違えることはありません。上向きの矢印を見つけると私たちは何も考えずにそのまま真っすぐ進みますが、国によっては、「後ろに進む」と認識されることがあるようです。ちなみにパリでは上向きの矢印が前進ではなく後進です。これは、日本のゲーム機の影響が強いのではないかと感じています。ゲーム機で、上下左右に矢印があって、上を押したらゲームの主人公は、真っすぐ前進をしてくれましたよね。その影響が日本には残っていて、上向きの矢印は前進というようになっています。これから日本は2020年までに記号化が進みま50ファイナンス 2017.10連 載|セミナー

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