ファイナンス 2017年10月号 Vol.53 No.7
52/60

ヨネーズふりかけに。お野菜に掛けることでお野菜の水分で、食べるころにちょうどよくするとか。おもしろいアイデアですね。では私も考えました。私たちが食べているフルーツ、そうですねブドウを思い浮かべてください。私たちは果肉を食べますので、外の皮はある意味果肉を包むパッケージと言えます。そのまま洗って食べてもいいし、皮をのぞいてもいいし。同じ様に、例えば、マヨネーズも中はマヨネーズのままで、外側をブドウの皮のように食べられる味のついたもので包み込んでみてはどうでしょう。中身はマヨネーズで、外の食べられる皮を例えばレモン味にしてみると、レモンを絞ったかのようなマヨネーズになります。アジアンテイストにするには外皮をパクチー味に! お弁当では潰してマヨネーズを出して、パクチー味やレモン味の外皮も一緒に食べれば味も変わりますし、お弁当がマヨネーズの水分でべちゃべちゃにならない! いろいろなアイデアがたった数分で溢れ出てきますね。これも、まず大事なものを、最初にごそっと抜き取ってあげるというのがポイントでした! 5.伝統文化を再構築(破壊)×ARTそれでは、この公式でつくられた作品をご覧いただきます。私の活動の主軸に、日本の伝統文化を再構築していきたいという想いがあります。書もそうですが、このまま紙に書き続けていくことから一歩先へ。日本の思想性は変えることなく再構築することは、きっとできると信じています。(1)春画をアートの領域で再構築春画は世界でも高い人気がある、日本の大衆芸能です。この春画をアートの領域で再構築し、作品にできないかなと。春画…浮世絵ですね。浮世絵は、版木が彫り残されているのです。筆で描かれた細く均一な線は、彫られたところではなくて、彫り残されて盛り上がっているところです。それをまず黒色を刷り、その後に何層も何層も色の版を重ねていって、一つの作品に仕上げていきます。ある意味フォトショップのレイヤー構造になっているわけです。そこで、まず絵からすべての墨蹟=線を抜き取った絵を制作します。絵から抜き取られた黒い線は私が勢いのあるかっこいい墨蹟にして引き直します。その墨蹟をさらに超立体的に彫刻化していきます。線を抜き取られた絵の手前に、彫刻の墨蹟=絵の輪郭を二層三層構造で置くレイヤーをつくります。それを正面から見ると、一つの絵となって見える。目を凝らすと見えてくるのです。ヨーロッパの方は絵と彫刻が融合した本作をとても気に入ってくださっています。(2)書の立体彫刻次の作品です。先ほどの公式でいうと、「書とは2Dに書かれたもの」ということを引き算してあります。そこに「彫刻」を掛け合わせます。文字が立体造形となり、そこに光を当てて、影で文字の意思を表す作品です。作品制作で大切なのは、奇をてらうのではなくて、文脈に則っていることです。例えば、私たちは、文字は紙に書かれるものと思っています、しかし、文字の歴史を遡ると、文字は3000年以上前に誕生し、文字の誕生は紙が生まれるよりももっと前ですので、当時は牛の骨や鹿の骨に文字を書くのではなく彫って刻んでおりました。つまり、文字はもともと平面ではなく立体だったと言えます。紙や伝統から開放されて立体になった書に光を当てて、影で再び平面に戻していくことは、文字の歴史を表したといえます。こちらの作品は「独」という書の彫刻です。私たちは漢数字で「一人」と言われると寂しいのですが、決してそのようなことはなくて、唯一独立した存在という意味の「独り」ですので、その存在(彫刻)にスポットライトを当てて、自分が自分であるために(彫刻と影が向かうことで)自分自身と向き合う様子を表現をしています。他にも、「寂」という字があります。48ファイナンス 2017.10連 載|セミナー

元のページ  ../index.html#52

このブックを見る