ファイナンス 2017年10月号 Vol.53 No.7
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夏季職員トップセミナー ものみたいなもので十分解析が可能であるというのが私の認識です。ちなみにグーグルが囲碁の「アルファ碁」で世界チャンピオンに勝ったというのが大きな話題になりましたが、あれは全世界の棋譜を集めても10万棋譜しかなかったのですね。10万棋譜だと足りないので、それでコンピューターとコンピューターとを自動的に対戦させて、3,000万棋譜つくったのです。3,000万ぐらいないとビッグデータにはなりませんので。でも世の中にそこまでデータがあるものはほとんどないので、ああいう世界と本当に世の中が必要としている問題とは違うのかなと思っております。多くの分野はエクセルに毛が生えたぐらいでいいのではないかと思っています。AIなんか使わなくてもデジタル化だけでも十分できることがあるということで、いつもイーグルバスの話と古紙回収の事例を紹介しております。①バス運行管理(イーグルバス)イーグルバスは非常に有名ですので、御存じの方も多いと思います。埼玉県川越市にある赤字だったバス会社がデータで黒字化したという話です。ざっくり言ってしまうとバスにGPSセンサーと乗降客数のセンサーをつけただけです。それによってそれぞれのバス停で何人乗って、何人降りたのかというのをデジタルデータとして集めていった。それをもとに「見える化」をしていったというだけです。それでバス停を再配置して時刻表を再設定することでお客さんの満足度とともに売り上げも上がっていったということです。このレベルでもいろいろとあり得るのだということをいろいろな方々に理解していただきたいと思っております。②古紙回収こちらは古紙回収システムで、これは四国の事例です。お客さんとスーパーマーケットと古紙回収事業者の三者がステークホルダーでありまして、その三者ともウイン・ウインの関係をつくり上げております。ポイントは何かというと、古紙回収ボックスのスマート化です。先ほどのごみ箱と一緒で、古紙回収ボックスにセンサーを入れて、古紙がどれだけ溜まっているのかというのを携帯電話回線で教えてあげる。そうすると回収事業者の回収コストがぐっと下がりますので、回収事業者は浮いたお金でそのスーパーマーケットのポイントに還元してあげる。お客さんはスーパーマーケットの駐車場に設置された古紙回収ボックスに古紙を置きに行くとポイントがもらえる。スーパーマーケットは、駐車場に古紙回収ボックスを設置することによってお客さんの来店頻度が上がる。古紙回収事業者は、古紙回収ボックスを少しスマート化するだけで回収コストがぐっと下がって、スーパーマーケットのポイントを与えたとしても十分利益が上がるというものです。特に地方はこういう小さな案件が膨大にあると思っていますので、こういったことをされている方々は、デジタル化するとうちでもいいことはないのかしら、と考えていただくことがすごく重要なのかなと思います。③スマート建設生産システムこちらは、一昨年度に鹿島建設が中心となって議論したスマート建設生産システムです。今後建設技能者が大幅に減る危機感が背景にあります。これから100万人減ったら今のままでは立ち行かない。そうすると生産性を上げざるを得ない。彼らがやっている企画・設計、製作・物流、施工、維持管理などのプロセスにおいて、アナログのプロセスがどこにあるのかを一つ一つリストアップし、どうやってデジタル化していくかを報告書でまとめたというものです。アナログの業界でもデジタル化の検討が進みつつあります。(2)日米の生産性比較こちらは昨年の末に日本生産性本部が出した日米の産業別生産性と付加価値シェアの表ですが、米国に比べて多くの分野で日本の生産性は低い。でも、これは逆に見るとチャンスがあるわけで、まだまだやるべきことはたくさんあるということファイナンス 2017.1039連 載|セミナー

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