ファイナンス 2017年10月号 Vol.53 No.7
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バーナンキ議長は米国時間前日(5月22日)の下院公聴会において、議員からの質問に「統計データの裏付けがあれば、次の2回のFOMC(連邦公開市場委員会)において、大規模な資産買い入れ政策(いわゆる量的緩和策)を縮減することはありうる」と答えていました。午後に発表されたFOMCの4月30日~5月1日(前回)の議事要旨では、何人かの委員は早ければ6月のFOMCでの量的緩和の縮減に前向きとの発言が記録されていました。FRBは、前年(2012年)9月、労働市場の改善の見通しの遅さを理由にリーマン危機以来3回目になる量的緩和策(QE3)を導入したばかりでした。13年春の失業率も7.6%程度で、市場はしばらく量的緩和が継続すると油断していた面がありました。市場関係者の間では、量的緩和の継続は新興市場国への資本流入44に繋がっていると考えられていました。従って量的緩和の縮減への早期の転換は逆に新興市場国からの資本流出44を連想させ、新興市場国を中心に市場が大きく動揺しました。この動揺は、市場関係者の間では、量的緩和の縮減と(市場の)癇癪を組み合わせて、テーパー・タントラムとして記憶されます。グラフは、主に欧米の投資信託やETFのASEANと韓国への累積44投資額を週次で示したものです。グラフが上に向かうのは東アジアへの資本流入を示し、下へ向かうのは東アジアからの資本流出を示します。2011年以降で見ると、2013年が欧米への資本流失額でも流失のペースでも最大だったことが分かります*1。休憩後直ぐに会議の内容を切り替え、東アジア資料2 EPFRデータによるASEANと韓国への資本流入累積額資本流出資本流入-102011年1月2011年4月2011年7月2011年10月2012年1月2012年4月2012年7月2012年10月2013年1月2013年4月2013年7月2013年10月2014年1月2014年4月2014年7月2014年10月2015年1月2015年4月2015年7月2015年10月2016年1月2016年4月2016年7月2016年10月01020304050(10億ドル)2013年5月バーナンキFRB議長発言2015年8月&12月中国人民銀行の声明発表米国の利上げ2011年8月米国債の格下げ(出所)AMRO Regional Surveillance Reports(2017)“ASEAN+3 Regional Economic Outlook 2017”, Figure B.1のデータを基に筆者が作成。原データはEPFRデータをAMROが補正したもの。Copyright 2017 AMRO.債券+株式:ASEAN(インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ)+韓国株式:ASEAN(インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ)+韓国*1)このデータは週次で集計されていました。なお、第一回で用いたCDSのグラフは市場のASEAN諸国の国債の債務不履行に対する警戒度合いを示すものです(実際の流出額を示すものではありません)。ブルンバーグなどの情報端末があれば随時いつでも確認できるのが利点となります。ファイナンス 2017.1031国際機関を作るはなし ASEAN+3マクロ経済リサーチ・オフィス(AMRO)創設見聞録 連 載|国際機関を作るはなし

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