ファイナンス 2017年10月号 Vol.53 No.7
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連 載|海外ウォッチャール(年平均1兆180億ドル、58%)、インド5兆1,520億ドル(年平均3,430億ドル、20%)、インドネシア1兆2,290億ドル(年平均820億ドル、4.7%)となっており(いずれも気候変動調整済み予測額)、全インフラ需要予測額のうち、中国及びインドで78%、それにインドネシアを加えた3カ国のみで、実に全需要の82.7%を占める(図2)。このようにアジア太平洋のインフラ需要予測といっても、その分布には、地域、あるいは国に応じてかなりの濃淡があることが分かる。各地域が示すインフラ需要予測額の対GDP比に関しては、予測額の規模が最も小さい太平洋が対GDP比では9.1%となり、最大値となっている。続いて南アジア8.8%、中央アジア7.8%、東南アジア5.7%、東アジア5.2%となっている。この傾向は、インフラストックが大きい国のインフラ需要は既存インフラのメンテナンス・整備の需要割合が大きく対GDP比は低い一方で、インフラストック及び一人当たりGDPが低く今後の成長見込みが大きい国はインフラ需要の対GDP比が高くなると説明されている。後者の代表例は太平洋であり、同地域へのインフラ投資は相対的に小額であってもなお、それら国々の経済に与えるインパクトは相対的に大きなものになるといえる。シームレスアジアが対象とした32DMCにおける2008年価格で算出された地域別の需要予測額との比較では(以下、2010年から2020年の需要→2016年から2030年の需要、で表記)、東アジア3,980億ドル→6,490億ドル(63%増)、南アジア2,150億ドル→3,400億ドル(58%増)、東南アジア1,000億ドル→1,450億ドル(45%増)、中央アジア340億ドル→260億ドル(24%減)*9、太平洋10億ドル→20億ドル(100%増)となっており、予測額の絶対的規模から判断すれば、やはり東アジアの需要拡大が顕著であることが分かる。4 セクター別のインフラ需要見通し次にセクター別の需要予測額及びその割合を概観する。今次報告は、シームレスアジアと同じく、電力、交通・運輸、通信、水・衛生の4セクターを対象としている。2016年から2030年の気候変動調整済み予測額において最も大きなインフラ需要が予測されるセクターは電力であり、14兆7,310億ドル(56.3%)とされる。次いで交通・運輸8兆3,530億ドル(31.9%)、通信2兆2,790億ドル(8.7%)、水・衛生8,020億ドル(3.1%)となっている*10。今次報告では、同4セクター内のサブセクターに関する詳細な記述はないものの、シームレスアジアでは、交通・運輸図2 2016-2030年 国別の気候変動調整済み予測額(国、$billion、%)筆者作成中国、15,267、58%インド、5,152、20%インドネシア、1,229、5%その他、4,518、17%*9)シームレスアジアとの比較では、中央アジアは年平均の需要予測額が減少している(340億ドル→260億ドル)理由に関し、筆者がADBの今次報告担当スタッフに照会したところ、2016年~2030年までの中央アジアの経済成長予測はシームレスアジアが対象とした2009年~2020年期間より減少する見通しであること、またシームレスアジアが実施した調査と今次報告が行った調査では、需要予測のベースとするデータが必ずしも同一のものでないことが理由ではないかとの説明があった。*10)シームレスアジアでは、交通・運輸セクターのサブセクターの一つである道路が全需要予測額の29.3%を占めていたが、今次報告ではサブセクターについての見積額の記述がないところ、サブセクターレベルの需要予測の推移は不明である。28ファイナンス 2017.10

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