ファイナンス 2017年10月号 Vol.53 No.7
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海外投資家との直接対話でニーズをきめ細かく把握海外投資家の分類: リアルマネー投資家とヘッジファンド海外投資家は、大きく二つの種類に分けることができます。一つ目は、外貨準備を運用する中央銀行等や、投資顧問、年金基金、生命保険、国家の資金運用を一元的に行うソブリン・ウェルス・ファンド(SWF)等のリアルマネーといわれる大口の機関投資家です。二つ目はデリバティブ等を駆使して収益を追求するヘッジファンドです。このうち、日本国債を保有している海外投資家の大半は、各国の中央銀行をはじめとするリアルマネー投資家であると見込まれます。一般的に、リアルマネー投資家はヘッジファンドに比べて、安全性や流動性を重視し、かつ安定的に保有する傾向が強いと言われていますが、最近では幅広い海外投資家層において、ベーシス・スワップを利用した中短期債への投資が活発化しています。ベーシス・スワップとは、通貨スワップの一種で、異なる通貨の元本を一定の為替レートのもとで一定期間交換し、その間それぞれの通貨に生じる金利を交換する取引のことです。財務省では、平成17年より、国債に係る海外投資家との関係強化の取組み(IR:Investor Relations)を実施しています。海外投資家を含む国債保有者層の多様化を通じて、国債市場の安定を図るとともに、投資家のニーズに応じた情報を正確かつタイムリーに提供することにより、長IR活動の実施海外投資家のタイプと投資行動リアルマネー投資家‣JGB(日本国債)市場に参加する海外投資家は、大きく分けて、「リアルマネー投資家」と「ヘッジファンド」の2つが存在するが、その投資行動は大きく異なっている。‣保有資金を国債を含む有価証券等に長期にわたって投資する傾向が強い。‣JGBの主要な投資家層。ヘッジファンド‣一定程度のリスクを取ったうえでレバレッジを効かせ、高いリターンを追求。‣短期かつ投機的な取引を行うことが多い。中央銀行(外準運用当局)→安全性・流動性を重視。JGBの主要な投資家。投資顧問年金基金生命保険ソブリン・ウェルス・ファンドマクロ系-景気・物価動向等のマクロ・シナリオに基づいて積極的に金利リスクを取った運用を実施。レラティブ・バリュー系-イールド・カーブの歪みに着目し、金利スワップを多用して利益を追求。CTA(Commodity Trading Advisor)系-過去の相場データから数理的な手法によりトレンドを抽出し、運用。8ファイナンス 2017.10

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