ファイナンス 2017年9月号 Vol.53 No.6
64/72

にて議論された。また、16年11月、17年3月のOECD・CG委員会本会合において、ピアレビュー・チームのヘッドであるマリサ・ラゴ前米財務省次官補等が分析結果を発表し、同委メンバーからの指摘も踏まえ、最終的に2017年4月に報告書が公表された。② 報告書の主な内容報告書においては、・多くの国で、包括的なCG枠組みが導入されているが、複数の関連法令等や当局機関間で、義務付け・推奨事項の整合性や責任分担が不明瞭であれば、実効性に悪影響を及ぼしうる。・企業の規模等に応じた一定の比例性(proportionality)が導入されているが、所有・支配形態や地理的要素、企業の発展段階等に応じた制度設計も検討可能。といった分析結果が示された。また、FSBメンバー国、OECD等の基準設定主体、金融機関等に対し、12の提言が示されたところ、主な内容は以下の通り。これらの提言はあくまで推奨事項であるところ、今後特段のフォローアップ等は予定されていない。・効果的なガバナンス枠組みの基礎の確保:CG枠組みが複数の法令等や当局機関にまたがっている場合、これらが整合的に機能することの確保。・開示と透明性:支配形態、投票方式、株主間の合意、株式持合い等に関する開示の改善。・取締役会の責任:倫理憲章の採択、取締役会の評価等。・株主の権利と公平な取扱い及び主要な持分機能:報酬方針や取締役等への報酬総額に係る投票権の確保。・その他:関連当事者取引の枠組み、取締役会における独立取締役の役割と責任。本ピアレビューによる推奨も踏まえて、OECDコーポレートガバナンス委員会の2017年ピアレビューにおいて、企業統治規律適用の比例性・柔軟性が取り上げられることとなった。成長促進や市場の統合性維持等に貢献するために、各国のコーポレートガバナンス枠組みに、どのような制度設計の工夫が加えられているか、調査・分析が進められている。(2)FATFピアレビュー①FATFの機能FATFは、マネー・ローンダリング(資金洗浄)対策における国際協調を推進するため、1989年のG7アルシュ・サミットにおいて設立された政府間会合であり、OECD内に事務局が置かれている。2001年9月の米国同時多発テロ以降は、テロ資金供与対策に関する国際的な協力についても指導的な役割を果たしている。ここでは、マネロン・テロ資金対策に関する国際基準であるFATF勧告の策定及び見直しを行っているほか、加盟国等(2017年6月現在35ヶ国・2地域機関)におけるFATF勧告の遵守状況を加盟国等が相互に監視(相互審査)するとともに、非加盟国についても、各地域(アジア太平洋・カリブ・南米・アフリカ等)のマネロン・テロ資金対策機関等と協力しつつ、マネロン・テロ資金対策推進のための支援活動を実施している。また、マネロン・テロ資金対策に非協力的な国・地域を特定・公表し、是正措置を求めるなど、各国におけるFATF勧告の着実な実施を促している。②FATF相互審査の位置づけとインパクト1)FATF第3次対日相互審査の結果は2008年10月15~17日ブラジルで開催されたFATF全体会合において採択され、同年10月30日(木)にFATFより対日相互審査報告書の概要が公表された。そこでは、以下の主な指摘を含め、当時あった全49の勧告中25について不備(Non-Compliant又はPartially Compliant)が指摘された。・テロ資金供与の犯罪化が不完全(テロ行為へのアジトの提供など物的支援も処罰対象とすべき)・金融機関、非金融機関に対し適用のあるマネー・ローンダリング及びテロ資金供与の予防措置に関し、顧客管理の要件や義務の一部欠60ファイナンス 2017.9SPOT

元のページ  ../index.html#64

このブックを見る