ファイナンス 2017年9月号 Vol.53 No.6
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め、リスク分析を拡充する必要がある、といった点が指摘されている。これらに対応するための取組みとして、以下の指摘事項(提言)が示されている。(i)金融安定に係る制度的枠組みを、 (a)システムリスクの評価や政策を議論する当局内部のプロセスを、明示的に幹部レベルで行うものへと更に発展させる、(b) 金融庁・日本銀行連絡会に堅固な制度的基盤を整備すべき(正式なマンデートの付与、参加当局の拡大など)。(ii)金融庁と日本銀行の間におけるシステミックリスクに係るデータ共有や共同の分析作業(ストレステストや相互関連性の分析)等を促進することにより、リスク評価枠組みの連携を進めるべき。(iii)金融庁と日本銀行は、 (a)ストレステストの対象をSIBs以外へ拡大、(b)ノンバンクセクターのリスク評価を向上、(c)ソブリン債と金融安定性の相互連関性に関する分析の充実、によるシステムリスク分析の拡充を検討すべき。② 金融機関の破綻処理1)市場参加者に対する明確性を高め、破綻処理制度の信頼性を向 上させ、適時の破綻処理が可能となるよう、(a)「危機対応措置」と「秩序ある処理」の違いを明確化し、(b)「債務超過のおそれ」という概念を詳細化した、透明かつ公式のガイダンスを策定すべき。2)破綻処理における一時的資金供与についての市場の期待と当局の意図の間のギャップを最小化するため、(a)金融機関の破綻から生じる損失補填は、まず民間資金に頼ることを意図していること、(b) 当局による資金援助は最終的には業界から回収されることが期待されていることを、パブリックコミュニケーションの中で明確化すべき。3)国際的な議論を踏まえ、システミックに重要なノンバンク金融機関について、業態別の破綻処理対応や破綻処理戦略を策定すること を考慮すべき。4)裁判所の関与が適時かつ実効的な破綻処理の実施を妨げることのないよう、破たん処理計画の中で裁判所の関与のあり方に留意すべき。3その他(1)FSBテーマ別ピアレビュー○ OECDやFSBでは、各国の進捗状況を点検したり、政策を進化させるといった目的で、政策テーマ別のピアレビューも行われている。FSBにおいては、2010年から本稿2.の国別ピアレビューと共に、テーマ別ピアレビューが実施されており、国際的な基準やFSBにおける合意事項の実施状況をストックテイクし、メンバー国間での経験共有機会の提供や、競争(race to the top)等を通じた更なる実施の推奨を企図したものである。2017年度はFSBにおいて、金融機関におけるコーポレートガバナンスについて実施された。また、後述のとおり、2018年度はOECDコーポレートガバナンス委員会において、企業統治規律適用の柔軟性と比例性について実施されることとなっている。①コポガバ ピアレビューの経緯2015年12月のFSB・SCSI会合において、テーマの1つとして、コーポレートガバナンスが選定され、2016年前半にToR、質問案等が断続的に議論された。FSBが本テーマを扱うにあたり、「FSBの作業に関連の深い原則に対象を限定すべき」との多数の意見が出され、①OECD・コーポレートガバナンス原則(CG原則)を本ピアレビューの唯一の基準として採用し、②同原則中、第1章(有効なコーポレートガバナンスの枠組みの基礎の確保)、第5章(開示及び透明性)、第6章(取締役会の責任)に中心的に依拠し、③対象を上場金融機関に限定し、レビューを実施することとされた。7月に質問が発出され、2016年秋~17年春にかけ、分析結果が主にSCSI会合(テレコン含む)ファイナンス 2017.959対日金融審査についてSPOT

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