ファイナンス 2017年9月号 Vol.53 No.6
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日本に対しては、2015年より最初の国別ピアレビューが、①マクロプルーデンス政策、②金融機関の破綻処理をテーマとして実施され、2016年12月21日に報告書が公表された。(2)対日審査報告の概要(これまでの取組みの評価)報告書においては、マクロプルーデンス政策と金融機関の破綻処理のいずれについても進捗がみられるとの評価が得られた。①マクロプルーデンス政策前回のFSAP以降、マクロプルーデンス政策の枠組みの強化のための重要なステップが実施されている。(i)制度的枠組み2014年6月から金融庁・日本銀行連絡会が開催されており、ハイレベルでの定期的な金融システムにおけるリスクの分析や評価に関する意見交換が実施されている。また、2016年3月からは、国際金融市場の動向に関する金融庁・財務省・日本銀行の会合が設置され、定期的に開催されている。2015年には金融庁内にマクロプルーデンス総括参事官室が設置され、主に金融市場や銀行セクターの動向を中心に、監督局や検査局と協働しながら、マクロプルーデンスの観点からモニタリングを実施している。マクロプルーデンス分析の結果は関連部局を含め庁内に共有されており、金融システムにおけるシステミックリスクについて金融庁内の幹部レベルの会議で議論されている。(ii)データ収集と共有金融庁・日本銀行において、例えばクロスボーダーエクスポージャーや外貨調達ミスマッチに関するデータ収集を強化するなど、データ収集の改善が図られている。また、リスク分析のための市場情報の活用も向上している。(iii)分析枠組み・リスク評価前回のFSAP以降、ダッシュボードやヒートマップ、早期警戒指標の活用やボトムアップストレステストの実施など、金融庁と日本銀行において、リスク評価のためのツールの強化がなされている。(iv)コミュニケーションと透明性金融庁と日本銀行において、金融安定上のリスクの評価に関する対外的なコミュニケーションや透明性の向上が図られている。金融庁では、2014年以降、様々な金融機関の動向や、金融機関のビジネスモデルのリスクや妥当性の分析等を記した金融モニタリングレポートを公表している。また、日本銀行では、日本の金融システム全体の状況についての分析・評価を目的として、金融システムレポートを公表している。②金融機関の破綻処理業界横断的な破綻処理制度を作った国は、FSB加盟国にも殆どなく、2013年の改正預金保険法は、日本の破綻処理制度の大幅な強化を示している。・日本の破綻処理制度は、広範な処理権限を提供している。更に、当局は、再建・破綻処理計画策定の対象をD-SIBsにも拡大するとともに、G-SIBsの望ましい破綻処理戦略を策定した。(3)対日審査の指摘事項(提言)(2)で述べたこれまでの取組みに対する評価を踏まえ、両テーマにおける更なる進捗を促すための指摘事項(提言)が示されている。①マクロプルーデンス政策上記のように、我が国におけるマクロプルーデンス政策の取組みについて評価をする一方で、(i)システムリスクの評価及びその政策上の含意を幹部レベルで議論するための明確なプロセスの策定が必要、(ii)システムリスクに関する金融庁と日本銀行の連携が限られている、(iii)ノンバンクセクターによるシステムリスクの評価をはじ58ファイナンス 2017.9SPOT

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