ファイナンス 2017年9月号 Vol.53 No.6
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していくであろう。少子高齢化の逆風による影響は、地銀、信金において特に強い。こうしたチャレンジに対処するために金融機関が進めている取組は、リスク無しではなく、また彼ら自身の取り組みそれだけでは不十分かもしれない。○ 金融監督は著しい改善を遂げてきたものの、こうした新たに生じてきている課題に対応するためには、更なる進展が必要である。銀行、保険、証券会社に亘り生じてきているより洗練された活動にペースを合わせたフル・リスク・ベースの健全性監督をサポートするためには、更なる内部プロセスの進展が鍵となる。コーポレートガバナンスは、銀行・保険セクターに亘って強化される必要がある。資本要求は、個々の銀行のリスクプロフィールにより合わせる必要があり、銀行が他行や他の業種の金融サービス会社との連携を進める中、リスクが蓄積するのを防止するために、関連者に対するエクスポージャーについてより強固なプリンシプルベースのアプローチが必要である。保険会社については、将来の制度に係る確実性は保険会社がビジネスや投資戦略を調整することを助けうるものであることから、経済価値ベースのソルベンシー制度の実施に向け、更なるステップを取るべきである。金融庁・日本銀行連絡会のマンデートの明確化とマクロプルーデンスツールのプロアクティブな拡大により、マクロプルーデンス政策の枠組みは更に強化しうる。○ それ故、引き続き、マクロ経済・人口動態のトレンドの持つ意味合いについて金融機関とエンゲージしていくことが重要であり、金融機関の持続可能性に懸念が認識された場合には、適時に対応することが重要となる。当局は、銀行が将来の持続可能性に関わる根底にあるトレンドの意味を完全に理解することを確保するために、銀行の取締役会やシニアマネジメントと更にエンゲージするとともに、金融機関がもはや存続不可能な時には、金融機関の退出を促進するよう迅速に行動することが推奨される。地銀は、手数料収入を伸ばすことを検討するよう推奨されるべきである。合併のみでこれらチャレンジに対応するには不十分かもしれないが、地銀の合併は、規模の経済をもたらすとともに、地方におけるより小さな金融システムへの移行をスムーズにするかもしれない。金融業界による金融サービスの提供は、引き続き高齢化社会の要求に適応していく必要がある。○ 多くの銀行のビジネスモデルに対するこれら長期的なチャレンジは、大きなシステミックに重要な金融機関の存在と相まって、強固な危機管理と破綻処理制度枠組みの必要性を強調している。破綻処理制度の枠組みや、再建・破綻処理計画において、重要な進展はあったものの、更なる改善の余地がある。破綻処理制度における様々な手段が取られ得る状況に関する曖昧さと、制度の複雑性は、破綻処理の実行を困難なものとし、それ故公的支援に対する期待に結びつくかもしれない。遅滞なく監督権限が行使されることを確保するための更なるステップが当局の早期介入の枠組みに、より確固とした形で埋め込まれるべきである。破綻処理ツールキットの拡張、CCPへの拡大を含めた(破綻処理に係る)法的枠組みの強化及び明確化、及びオペレーショナルな側面における改良は、当局の用意と市場の期待・インセンティブの舵を切る(steer)ことを助けるであろう。(4)今次対日審査の主な勧告(分野横断的課題)・銀行・保険セクターに亘り取締役会の独立性とシニアマネジメントによる監督機能の強化のためにコーポレートガバナンスの基準の更なる引き上げ・銀行・保険・証券会社に対するフル・リスク・ベースの監督をサポートするための更なる内部プロセスの発展・重要な監督事項における金融庁・日銀の独立性強化の検討(システミックリスク)・銀行のソルベンシー及び流動性についてのリス56ファイナンス 2017.9SPOT

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