ファイナンス 2017年9月号 Vol.53 No.6
56/72

件のミニシンポジウムを開催し、そのほかにも、平成28年(2016年)11月には、第22回国際動物学会・第87回日本動物学合同大会がOISTで開催された(参加者750名、うち海外200名)。ちなみに、沖縄県のMICE実績はほぼOIST開催案件によっているところである。なお、OISTでは、規模拡充に当たり、平成27年(2015年)7月に、大学全体(教育、研究、運営等)に関する外部評価(ピア・レビュー)を行った。評価委員会(パネル)は、ノーベル賞受賞者を含む国内外の著名な科学者6名で構成された。評価結果として、卓越性を測る全ての主要な基準*13において、傑出した成果(outstanding)がみられると評価し、こうした基準に照らすと、OISTは、世界で最も高い評価を受けているトップ25大学と肩を並べているとした。(7)知的・産業クラスター形成に向けた取組バックマン首席副学長が統括する技術開発イノベーションセンターの28年度の実績は概要以下の通りである。ア)11件の主要企業との受託・研究開発合意が締結された(新規6件、継続5件)イ)11件の秘密保持契約が結ばれ、新たな研究開発合意が現在考案中になっている。ウ)外部資金獲得額は、2億3000万円となり、前年度の1億2400万円より1億円増えた。このうち、沖縄県が資金提供した新規2件のプロジェクトの中で、外来種対策事業はヒアリ等対策であり、全国的にOISTの研究成果の一端が紹介された。また、JST(国立研究開発法人科学技術振興機構)のSTARTに、微生物燃料電池を用いた新規エコ排水処理システムの開発が採択された。OISTでは2回目となる。さらに、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構と、水産物の国際協力に打ち勝つ横断的育種技術と新発想飼料の開発をテーマに共同研究(5年)が開始された。エ)特許出願数等は、出願数86件(前年度55)、登録数22件(同6)を見込んでいる。オ)Proof of Concept(概念実証)プログラムは、研究における発見を商業化する際に生じる技術面・資金面のギャップを埋め、商業化に橋渡しすることを目的とした産学連携プログラムである。研究テーマを学内公募し、採択テーマをOISTとして積極的に支援するもの。28年度に7つの新たなプロジェクトが採択され、進行中のプロジェクトは12となった。カ)OISTにおいては、今後のスタートアップ企業等が利用する、キャンパスの近くのインキュベーション施設設立の必要性について検討を開始している。なお、OIST研究からのスピンオフ事例としては、平成26年(2014年)6月に設立された、沖縄プロテイントモグラフィー株式会社がOIST発ベンチャー第1号として知られている。構造細胞生物学ユニット代表のウルフ・スコグランド教授が開発したタンパク質等の分子構造の3次元可視化技術を活用したプロテイントモグラフィー技術により、その解析結果を製薬企業に提供する事業である。キ)平成29年3月に、OISTは、研究成果等を地域社会に円滑に還元すること及び緊密な情報交換等を行なうことにより沖縄地域の産学連携を推進し、地域企業及び地域経済の活性化に資することを目的に、沖縄振興開発金融公庫と「産学連携に係る協力推進に関する覚書」を締結した。•おわりにOISTについて、平成28年度の監査報告書が示唆深い*14。監事は、「監査に当たっての基本的な考え方」として、「本学は開学から5年を経過し、また、これまで累次にわたる監事監査及び内部監査も実施されてきた。その基本的運営について見ると、今後の更なる拡張を見据え、組織の在り方*13)以下の8つの基準。1.物理的キャンパスのインフラ整備、2.管理運営体制及びプロセス、3.学術プログラム及び教員の採用、4.博士課程、5.機器、6.研究成果に達するまでの経過、7.技術移転、8.福利厚生、社会的・文化的支援プログラム*14)沖縄科学技術大学院大学のホームページの「OISTについて」より「組織」→「情報公開」でアクセスできる。52ファイナンス 2017.9SPOT

元のページ  ../index.html#56

このブックを見る