ファイナンス 2017年9月号 Vol.53 No.6
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•はじめに沖縄が本土に復帰して、45年が経過した。現行の沖縄振興特別措置法に基づき沖縄県が策定した沖縄振興計画は、平成29年で5年が経過した中間年となる。それにあたり、沖縄振興策を調査・審議する、内閣府に置かれた沖縄振興審議会においては、昨年来、審議会会長・専門委員で、5回の会合を開催し、現行計画の評価を行ったところで、昨年11月17日に「半世紀を迎える沖縄振興の今後の在り方について」という意見を審議会に提出するとともに、公表している。その中では、「沖縄科学技術大学院大学は開学後大きく発展しており、今後バイオ、海洋等の分野で振興に寄与することが期待される。」との評価を得ている。また、本年6月9日に閣議決定された、いわゆる「骨太の方針2017」における沖縄振興の部分では、「成長するアジアの玄関口に位置付けられるなど、沖縄の優位性と潜在力を活かし、日本のフロントランナーとして経済再生の牽引役となるよう、引き続き、国家戦略として、沖縄振興策を総合的・積極的に推進する。(中略)沖縄科学技術大学院大学の規模拡充に向けた検討や知的・産業クラスター形成、(中略)の推進を図る。」とされている。本稿では、開学6年となり、来春には初の卒業式も行われることになっている(平成30年(2018年)2月に開催予定)、この沖縄科学技術大学院大学(以下、略す場合は、「OIST」という。)の最近の歩みと現状を中心に紹介したい。1沖縄科学技術大学院大学構想の歩み(1)第4次の沖縄振興計画における位置づけこの沖縄科学技術大学院大学の構想は、15年前(2002年)の第四次の沖縄振興特別措置法(平成14年3月31日法律第14号)第85条第2項に、「国及び地方公共団体は、沖縄において、国際的に卓越した教育研究を行う大学院を置く大学その他の教育研究機関の整備、充実等必要な措置を講ずることにより、国際的視点に立った科学技術の水準の向上に努めるものとする。」との形で法律に姿をあらわした*1。この法律を受けた沖縄振興計画(平成14年7月内閣総理大臣決定)では、「第2章 振興の基本的方向」の「1 基本的課題 (3)基本課題」で、「…一方、第3次沖縄振興開発計画で新たに加えられた「我が国経済社会及び文化の発展に寄与する特色ある地域としての沖縄科学技術大学院大学(OIST:Okinawa Institute of Science and Technology Graduate University)について前内閣府大臣官房審議官(沖縄政策担当及び沖縄科学技術大学院大学企画推進担当) 渡部 晶Spot06*1)学校法人沖縄科学技術大学院大学学園の理事である尾身幸次氏の著書「天風哲学実践記」(2010年12月 PHP研究所)の「20 沖縄大学院大学構想と「理想の摩訶力」」(P271以下)には、2001年4月に科学技術政策担当と、沖縄振興・北方対策担当大臣を任命された当時を回想し、「(前略)本来、科学技術と沖縄対策は別に何の関係もなかった。さてその一見全く関係のない二つの担当大臣をやることになって、どのように仕事をしようかと思い、考えついたのが沖縄の大学院大学構想である。というのは、沖縄は観光地としては非常に有名であるが、いわゆる近代産業は発展していない。そして1人当たりの国民所得も日本一低い。その沖縄を将来にわたってどう発展させていくか、そういうことをいろいろ考えながら、かつ一方では科学技術で日本を創り直そうということを考えていた私がそれならば二つのアイディアを結びつけて、沖縄に科学技術系の大学院大学を作ろうと思いついたのである。(以下略)」とある。実際、尾身氏自らが平成13年(2001年)6月に「沖縄科学技術大学院大学構想」を発表したことに端を発する。44ファイナンス 2017.9SPOT

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