ファイナンス 2017年9月号 Vol.53 No.6
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され、環境改善効果を挙げているかどうかをチェックし、その遵守を確保する枠組みは十分に確立されていない。債券発行者が元金・利息の支払いをできなくなることをデフォルトというが、グリーン・ボンド発行者が、グリーンに関する約束を破る「グリーン・デフォルト」といった事例も、今後出てくる可能性がある。その場合、債券購入者が発行者に対し、法的にその約束の履行を求めることができるのかは定かでない。こうした問題に対処し、グリーン・ボンド市場の透明性、信頼性を高めるためには、国際的な共通ルールの策定や、規制的な枠組みを導入することが考えられるが、そうした方向性には賛否両論がある。グリーン・ボンド市場はこれまで基本的に、市場参加者が主体となって自律的に発展してきた。厳しいルールや規制を導入することは、取引コストを高め、通常の債券と比して相対的にグリーン・ボンドを不利にし、その発展の芽を摘んでしまうおそれもある。市場の信頼性と効率性のバランスをどのように図るかという、金融規制に共通の議論がここでも当てはまる。また、グリーン・ボンドは単に、通常の債券や借入れで調達していた資金の一部を代替しているに過ぎず、グリーン投資に向かう資金を増やしているとは言えないのではないかとの指摘もある。この点についての評価は難しいが、例えば欧米では、単独では市場での資金調達が難しい個人や小規模自治体の需要を仲介機関が束ねて、グリーン・ボンドにより資金調達する仕組みも出てきており、こうしたケースではグリーン・ボンドの効用がより明確といえる。以上のように、グリーン・ボンドに関しては様々な課題はあるものの、今後さらに普及し、グリーン・ファイナンスを市場関係者にとってより身近なものとしていくことが予想される。日本でも、東京都が発行を表明するなど、注目を集めつつある。次回は、気候変動が金融市場にもたらすリスクと、グリーン・ファイナンスに関するG20及び日本の動きについて紹介したい。ファイナンス 2017.943グリーン・ファイナンスの最前線(第2回)SPOT

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