ファイナンス 2017年9月号 Vol.53 No.6
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(コラム3) EUの通商政策○EUでは、EU理事会*26による授権(mandate)に基づき、欧州委員会*27がWTOを含む通商協定の交渉を行う。欧州委員会は、授権の際の交渉指令に基づき単独で交渉にあたり、都度、加盟国により構成される委員会に交渉状況を報告する。交渉妥結後、理事会の決定に基づき、協定への署名がなされる。また、協定発効のためには、欧州議会*28の同意が必要となる。○協定がEUの排他的権限に属する分野(加盟国がEUに対して権限移譲している分野)だけでなく、加盟国との共有権限に属する分野も対象とする場合には、協定発効のためには、理事会の決定、欧州議会の同意だけでなく、加盟各国の批准も必要となる*29。○主な通商協定は、以下のとおりである。〈欧州経済領域(EEA:European Economic Area)〉域内における物、人、サービス、資本の移動の自由を確保・欧州自由貿易連合(EFTA(ノルウェー、アイスランド及びリヒテンシュタイン)、スイスを除く) (1994年発効)〈関税同盟(Customs Union)〉域内の関税・数量制限を撤廃するとともに、域外に対する共通関税を適用・トルコ (1995年発効。工業製品および農産加工品が対象)〈自由貿易協定(FTA:Free Trade Agreement)〉・スイス(1973年発効)・韓国(2015年発効)・カナダ(包括的経済貿易協定(CETA)、2017年9月暫定適用予定)・シンガポール(2014年に署名)・ベトナム(2016年2月に交渉妥結)・日本(2017年7月に大枠合意)(FTA交渉中) 米国*30、マレーシア、タイ、インド、フィリピン、メルコスール、湾岸協力会議(GCC)他※アジア大洋州においては、マレーシアとタイ、インドとの交渉は停滞する一方、フィリピンと2015年に、インドネシアと2016年に交渉開始で同意するとともに、オーストラリアとニュージーランドについて2017年中の交渉開始が見込まれる。*26)EU理事会(Council of the European Union)。EUの共同決定機関であり、欧州議会と共に立法機関としての役割を果たす。政策分野ごとに10の会合があり、それぞれの理事会は各加盟国の各分野を所掌する閣僚により構成。*27)欧州委員会(The European Commission)。EUの執行機関。各加盟国から1人ずつ任命された28名の欧州委員(閣僚相当)で構成(任期5年)。各委員の下に、「省庁」に相当する各分野別の「総局」等を配置。*28)欧州議会(The European Parliament)。議員は各加盟国において直接選挙によって選出される。各加盟国の人口比に応じて、国別の議員数が決定(定数751名、任期5年)。*29)リスボン条約(2009年発効)は、EUに授与されている権限を3つの領域に分類し、EUと加盟国の間の権限分担を明確化している。第1の領域は、EUが単独で権限を持つ分野(排他的権限)。EUだけが立法や国際協定の締結を行うことができる。例として共通通商政策。第2の領域は、EUと加盟国が共に権限を持つ分野(共有権限)。両方が立法することができるが、EUが権限を行使してEU法を制定すると、加盟国はそれと異なる立法を行うことができない。第3の領域は、加盟国の分担責任をEUが補充する分野(補充的権限)。EUは加盟国が分担する責任を支援、調整、補充するための行動を行うが、EUの分担責任とすることはできない。*30)EUと米国は、包括的貿易投資協定(TTIP:Transatlantic Trade and Investment Partnership)の交渉を2013年7月に開始し、これまで15回の交渉ラウンドを行ったが、米国トランプ政権の誕生に伴って交渉は停止状態(on hold)にある。ファイナンス 2017.937日EU経済連携協定(日EU・EPA)の大枠合意について~財務省所管品目の市場アクセス交渉等に関する結果を中心に~SPOT

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