ファイナンス 2017年9月号 Vol.53 No.6
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(コラム1) 関税局と経済連携協定(EPA)交渉○自由で公正な貿易を堅持し発展させていくため、従来から、WTO(世界貿易機関)を中心とする多角的な自由貿易体制を推進しているが、WTO交渉が実質的に停滞する中、経済環境の変化に合わせて通商ルールを進化させるためには、新たな枠組として、基本的価値を共有し、志を同じくする国々の共通ルールを作る必要がある。こうした考えの下、近年、より広範囲に効力を有することが期待される広域経済連携(メガFTA)の締結交渉を積極的に進めてきている。○財務省は外務省・経済産業省・農林水産省とともに、共同議長4省の一角として経済連携交渉に参加している。特に関税制度(EPAに基づくセーフガードや関税割当等)、協定発効に伴う関税関係国内法令の整備や税関行政を所管する立場から、税関手続(情報交換、税関協力、貿易円滑化等)、原産地規則、財務省所管品目(酒、たばこ、塩)の関税、地理的表示、非関税措置等に係る交渉等を担当している。○関税局においては、経済連携室が経済上の連携に係る関税及び税関行政に関する制度の企画・立案を担っており、相手国との交渉や国内調整に取り組んでいる*24。○我が国では、2017年3月現在、20か国との間で16の経済連携協定(EPA)が発効又は署名済である。発効済・署名済EPA相手国との貿易が貿易総額に占める割合は40.0%(うちTPPは17.5%)である(日EU・EPAは11.9%の貢献)。○数年間の交渉を経てTPP協定に結実した新たなルールは、21世紀型の経済体制のスタンダードであり、今後の経済連携の礎となるものである。我が国はこの成果を基礎として、日EU・EPAの署名、締結に至るプロセスを進展させるとともに、RCEP*25などの枠組みが野心的な協定となるよう経済連携交渉をリードしていく。○「未来投資戦略2017」においても、「自由で公正な市場を、アジア太平洋地域をはじめ、世界に広げていくため、我が国が締結したTPP協定の発効に取り組むとともに、参加国・地域の拡大について議論を進めていく。また、日EU・EPA、RCEP、日中韓FTAなどの経済連携交渉を、戦略的かつスピード感を持って推進する。我が国は、自由貿易の旗手として、こうした新しい広域的経済秩序を構築する上で中核的な役割を果たし、包括的で、バランスのとれた、高いレベルの世界のルールづくりの牽引者となることを目指す。」こととされている。○こうした政府全体の方針を踏まえ、関税局は関税制度や通関行政を所管する立場からアジア・太平洋地域、東アジア地域、欧州などとの経済連携を推進している。*24)そのほか、参事官室(国際交渉担当)がWTO(世界貿易機関)を中心とする多角的自由貿易体制の維持・強化、各国税関との情報交換等を、参事官室(国際協力担当)がWCO(世界税関機構)における国際協力、途上国税関に対する技術協力等を、それぞれ担っている。*25)東アジア地域包括的経済連携。Regional Comprehensive Economic Partnershipの略称。ASEANの10カ国と日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド及びインドの6カ国が交渉に参加する広域経済連携である。当する国税庁課税部酒税課の多大な理解と協力があったおかげであり、特にEUとの交渉のフロントで語り尽くせない活躍をされた飯島隆課長補佐には心から感謝している。34ファイナンス 2017.9SPOT

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