ファイナンス 2017年9月号 Vol.53 No.6
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財務省幹部に交渉状況を報告した際、当該幹部から、放送中のNHK大河ドラマに掛けて、「真田丸だな」と評された。日本側の守りの分野において、大勢の策は大坂に籠城と決する中で、財務省は大坂城の外に出丸を築き、EU側を迎え撃つことを決めたのであり、「戦国の荒波に立ち向かう一艘の船」に例えた言葉は、的を射たものであって、意を強くした。(実のところ、言葉の意味をその場で理解できず、家に帰って風呂の中で分かったが、含蓄のある言葉は、得てしてそういうものであろう。)EUのワイン輸入規制は、欧州のワインの歴史、ワイン文化を支えるワイン法の成り立ちに由来する「岩盤規制」であり、その緩和を要求する交渉は入り口から難航し、幾度となく暗礁に乗り上げ、パッケージを小さく纏めることを覚悟する場面もあった。交渉を巡る情勢は不安定、不確実、複雑、曖昧であり、論理と理性(サイエンス)が必ずしも機能しない状況の下で、直感と感性(アート)も拠り所にし、「美意識」に頼って、最終的に大きく纏めることができた。このような交渉の舵取りを最後まで貫けたことは、酒類行政を担*23)清酒・焼酎の輸出は、米国、東アジア等に比べてEU向けは少ない。ワインの輸出は僅かである。日本からの輸出量(平成28年)は以下のとおり。・清酒:19,737KL、15,581百万円(うちEU向け:1,605KL、1,085百万円)・焼酎:3,834KL、1,954百万円(うちEU向け:28KL、26百万円)・ワイン:207KL、154百万円(うちEU向け:10KL、15百万円)(参考3) 最近の日本産酒類の輸出動向輸出金額、輸出数量は共に年々増加し、過去最高を記録しているが、EU向け輸出は未だ少量*23。7,0487,6767,1848,5008,7768,94610,52411,50714,01115,5815,9756,9222,8132,9982,6993,1823,7994,4755,4496,5848,5509,4893,5804,6161,1921,4281,5521,7181,9842,4773,9805,85010,37810,8445,4687,0991,5861,6501,4851,6921,8392,0532,5452,7973,3564,2111,5581,8521,9032,1061,8151,9531,7142,0481,9991,9371,9011,9547798841,17991366581492166060167683291636950715,39917,85719,03320,66025,09729,35139,02942,99617,73021,88144,60745,21644,29049,59156,49765,86777,19787,796109,906124,710020,00040,00060,00080,000100,000120,00005,00010,00015,00020,00025,00030,00035,00040,00045,00050,00055,0001920212223242526272828(1~5)29(1~5)(百万円)(年)その他(ボトルワイン等)しょうちゅう・その他の蒸留酒リキュールウイスキービール清酒16,77115,720(kl)※太字は輸出数量47,22262,182※参考ファイナンス 2017.933日EU経済連携協定(日EU・EPA)の大枠合意について~財務省所管品目の市場アクセス交渉等に関する結果を中心に~SPOT

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