ファイナンス 2017年9月号 Vol.53 No.6
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具体的には、日EU・EPA、さらにはTPPの早期発効に向けた11か国による取組も踏まえた政策を体系的に整理し、本年秋を目途に、総合的なTPP関連政策大綱を改訂することとしている*22。特に日本産酒類については、日EU・EPAによる輸出拡大のチャンスを活かすことが重要であり、日本産酒類の競争力強化のため、日本産酒類の情報発信や輸出環境整備、技術支援等のための措置を一層講じることが必要となると思われる。5おわりに2013年(平成25年)に始まった日本とEUのEPA交渉は、2015年(平成27年)中に大筋合意する目標であったが、双方の懸隔が大きい物品関税等の調整が難航し、目標を1年先延ばししても合意できず、停滞感が漂っていたところ、今年に入って交渉が加速した。その大きな要因として、米国ではトランプ大統領が、本年1月、TPPから離脱するなど、保護主義的な政策を相次いで打ち出している。EU内部でも、英国の離脱や、域内各国での保護主義的な政策を掲げる政党の躍進などが続き、EU自体の結束が揺らいでいる。こうした中、日本とEUは、今回のEPAが合意に至れば、自由貿易への求心力につながるという狙いから、交渉を進める機運が高まったといわれている。日EU双方ができる限り早期の大枠合意を目指して最大限努力する中で、関税局は、経済連携室及び原産地規則専門官(現・原産地規則室)を中心に、交渉のフロントや国内調整の業務に精力的に取り組んだ。日EU双方の様々な思惑が絡み合い、期待と懸念が交錯する中で、財務省としては、所管品目のワインがEUの関心品目という基本構造の下、最終局面であるこの1年間は、「5億人の巨大なEU市場を確保する」との目標を掲げ、攻めの姿勢を最後まで貫いた。これまでの通商交渉は守り一辺倒であり、やせ我慢を続けてきたことは否めないところ、攻めに転じた今回の交渉は、今後の通商交渉のモデルケースになるものと思われる。*22)今回の大枠合意を踏まえ、できる限りの総合的な対策を実施するために必要な国内体制の整備や対策の策定などについて、総理から石原TPP担当大臣に指示が出された。これを踏まえ、「TPP総合対策本部」は「TPP等総合対策本部」に改組され、事務局体制も「TPP政府対策本部」は「TPP等政府対策本部」に改組されている。(参考2)日EU貿易構造(出典:財務省貿易統計 2017年)対EU輸出8.0兆円対EU輸入8.2兆円化学製品原料別製品一般機械電気機器輸送用機器その他その他食料品0.4%原料品0.9%鉱物性燃料0.2%有機化合物2.3%その他化学製品6.0%原料別製品6.6%原動機4.4%ポンプ・遠心分離機2.6%その他一般機械16.2%半導体等電子部品2.4%映像機器1.2%電気回路等の機器1.7%その他電気機器12.4%自動車15.7%自動車の部分品5.8%その他輸送用機器2.4%船舶1.6%二輪自動車・原動機付自転車1.3%科学光学機器3.0%その他12.8%その他食料品化学製品原料別製品その他化学製品6.7%電気機器一般機械輸送用機器魚介類及び同調製品0.7%バッグ類2.3%その他食品9.7%原料品2.9%有機化合物5.2%鉱物性燃料0.5%医薬品19.0%鉄鋼0.4%その他原料別製品5.7%原動機3.6%その他一般機械7.6%電気計測機器2.2%半導体等電子部品1.1%その他電気機器5.5%自動車11.7%自動車の部分品1.5%その他輸送用機器1.9%科学光学機器4.3%衣類及び同付属品1.9%その他5.7%32ファイナンス 2017.9SPOT

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