ファイナンス 2017年9月号 Vol.53 No.6
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一方、EUは主要生産国(米、豪、チリ、南ア、加)に対し、ワイン醸造方法を相互承認する二国間協定を締結して、ワインの輸入規制を例外的に撤廃してきているが、新たに「日本ワイン」について、EUの輸入規制撤廃を実現した。これまで、「日本ワイン」の多くがEUではワインとは認められなかったが、今後は、EU域内で自由に流通、販売できるようになる。ワインの輸入規制撤廃は、EU関税の即時撤廃と相まって、「日本ワイン」にとって、5億人の巨大なEU市場を新たに開拓するという意義があり、全体としてみれば、バランスを確保したと考えている。(注2)EUには、ワイン自体を定義し、その醸造方法やラベル記載内容を厳格に規定するワイン法が存在する*14。醸造方法については、産地の気候条件に応じて、アルコール度数や総酸度などの下限や上限が定められ、補糖や補酸、アルコールの添加といった醸造時の補助操作に対し、添加量の上限などの基準が設けられている。ワインの種類や産地ごとに定められた基準を満たさない場合、たとえ同じような醸造方法で同じ地域で生産されたとしても、EUのワインとは認められず市場に流通できない。EUのワイン法はEUに輸入されるワインにも適用される。〈大枠合意結果のポイント〉○EU関税や輸入規制の撤廃、日本GIの保護を通じ、日本産酒類の競争力を高め、新たな市場を確保【関税分野(物品市場アクセス(MA))】(EUへの輸出)・酒類、たばこ、塩:全品目を即時撤廃(日本への輸入)〈酒類〉・ワイン(ボトルワイン、スパークリングワイン等):即時撤廃・清酒、焼酎等:11年目に撤廃〈たばこ〉・紙巻たばこ:協定税率として無税(現在、暫定税率で無税)・手巻きたばこ、加熱式たばこ:6年目に撤廃(現行税率3.4%)・葉巻たばこ:11年目に撤廃(現行税率16%)〈塩〉・精製塩:11年目に撤廃《解説》○酒類〈現状〉EU側・ボトルワイン:0.154ユーロ/L(約20円)※アルコール度により異なる。14度の場合を例示・スパークリングワイン:0.32ユーロ/L (約41円)・ 清酒:0.077ユーロ/L(約10円)(焼酎は無税)日本側・ボトルワイン:67円~125円/L・スパークリングワイン:182円/L・清酒:70.4円/L・焼酎:16%(従価税)〈交渉結果〉EU側・清酒の関税を即時撤廃。ワインの関税も即時撤廃日本側・ワインの関税を即時撤廃。清酒・焼酎の関税を11年目に撤廃(段階的撤廃)*14)EUのワイン法は、複数のEU理事会規則と欧州委員会の施行規則によって構成され、加盟各国の国内法に優先して各国政府や企業の行動を直接規制する。「EUのワイン産業に対する支援措置」、「使用可能なぶどう品種、醸造法、原産地呼称・地理的表示制度、ラベル表記などの規制措置」(狭義のワイン法)、「域外国との輸出入規定」、「生産調整に関する規定」などからなる。28ファイナンス 2017.9SPOT

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