ファイナンス 2017年9月号 Vol.53 No.6
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また、国際的な貿易及び投資の利益が十分広く共有されていないとの認識が示され、包摂的で持続可能な成長に向け国際協力を強化することで合意した。*2安倍総理は、世界経済を含む第1セッション「経済成長・貿易」において、リード・スピーカーとして首脳間の議論を牽引した。安倍総理からは、アベノミクスの「三本の矢」の成果を紹介しつつ、構造、財政及び金融政策の全ての政策手段を用いることが引き続き必要であることを訴えた。また、経済成長の果実を社会の隅々まで行き渡らせるには、イノベーションや生産性向上を推進するとともに包摂性を実現し、「成長と分配の好循環」を創り上げること等が重要である旨指摘した。安倍総理の提言に対し、複数の首脳から賛同が示された。2国際金融アーキテクチャについて各国の個別のマクロ経済政策や成長戦略の現状と今後の計画を記載した「ハンブルク行動計画」で提示されたように、引き続き、国際資本フローを支えるシステムを改善し、健全で持続可能な金融慣行を促進する必要性を強調した。また、国際金融アーキテクチャ、及びIMFを中心とするグローバル金融セーフティネットを強化するという認識を共有した。IMFの貸出手段の実効性をさらに向上させるための、継続中の取組や、開発金融において民間資金を動員するための国際開発金融機関(MDBs)の「共同原則」及び「目標」(「ハンブルク原則及び目標」)を支持することを確認した。3国際課税について検討過程において我が国が主導的役割を果たした「税源浸食と利益移転(BEPS)」パッケージの実施につきG20として引き続きコミットし、全ての関連する法域に「包摂的枠組み」への参加を奨励した。また首脳は、「共通報告基準(CRS)」に基づく金融口座情報の初回の自動的交換が2017年9月に行われることを期待し、全ての関係法域が遅くとも2018年9月までに交換を開始することを求めた。さらに、税の透明性に関して合意された国際基準の満足のいく水準での実施を達成するための各法域による最近の進捗を称賛し、2018年のサミットまでに、実施に向けた更なる取組を反映したリストがOECDから提出されることを期待した。税の安定性向上、そしてOECDと共同で経済の電子化によって惹起される課税上の課題にも取り組むことを確認した。4金融セクターについて合意されたG20金融セクター改革の課題の最終化と、適時、完全かつ整合的な実施に引き続きコミットし、公平な競争条件を促進しつつ、銀行セクターにおける資本賦課の全体水準を更に大きく引き上げることなくバーゼルⅢの枠組みの最終化に取り組むことを確認した。また、金融規制改革の影響を評価するためのFSBの作業及び実施後の影響の評価のための構造的な枠組を支持するとともに、情報通信技術(ICT)の悪意のある利用が金融安定を脅かしうることを認識し、我々は、FSBの作業の進捗を歓迎するとともに、2017年10月に現状調査に関する報告書を期待するという認識を共有した。5議長国G20ハンブルク・サミットにおいて、G20首脳の支持を得て、日本が、2019年のG20サミットの議長国を務めることが決定した。参考2)首脳宣言(抜粋)グローバル化の利益の共有繁栄する世界経済成長は依然として望ましいペースよりも弱いが、現在の成長見通しは、心強いものである。我々は、さらに成長を強化し下方リスクから守るため、国際的な経済・金融協力へのコミットメントを再確認する。我々は、経済及び金融面*2)こうした宣言が出された背景には、グローバル化や技術革新を背景に経済格差が拡大しているという認識、不満の広がりがある。現に、サミット期間中のハンブルクでは、警備強化にもかかわらず、G20を非難する人々のデモの一部が暴徒化するといった事態も起きた。22ファイナンス 2017.9SPOT

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