ファイナンス 2017年9月号 Vol.53 No.6
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三村 JAPIC(一般社団法人 日本プロジェクト産業協議会)という組織があります。非常に長い時間をかけて、東京湾横断道路、本州・四国連絡橋などの大型プロジェクトを実現させてきた組織です。私は平成19年に会長を引き受けましたが、そのときはすでに、大型プロジェクトを推進していく役割は終わっていました。そこで何ができるのか、みんなで考えた結果「日本のためになることは何でもやろう」という方向性が出てきました。そこでJAPICの思想を変えて、大きく路線変更をしたのです。現在までにさまざまな取り組みをしてきましたが、そのうちの一つが林業に関するものでした。戦後に国民が努力して植林したにも関わらず、日本の山は放置され、木材の供給は外国に取って代わられてしまいました。山は、相続するのもいやがられて、所有者すらわからなくなっていることもあります。国内の木材の消費量は、年間8,000万㎥程度です。日本の木材は戦後の植林とその後の生育によって、消費量以上に木材が育っています。木材が足りないと言いますが、国内に十分な資源があるのです。需要があって供給できるのであれば、それを産業として使ってはどうかと考えました。問題は安定供給でした。ハウスメーカーには、相当な木材需要がありますが、大量に安定して供給できるかどうかが問題になります。また、しっかりと品質管理がなされていること、コストがリーズナブルであることも重要です。これらを満たすためには、どうすればいいのか、民間の知恵を集めるために、「林業復活・地域創生を推進する国民会議」を発足させました。―2013年に発足して4年が経過しましたが、国民会議としての取組みの意義と今後の展望について教えてください。三村 この活動を通じて生産性が50%程度向上しました。それに合わせて、一時は18%まで下がった木材の国産比率は33%まで回復しています。また、ウッドジョブをテーマにした三浦しをん氏の「神去なあなあ日常」が映画化され、若者が林業に目を向けてくれたのも幸運でした。農業の平均年齢は現在67歳程度ですが、林業は平均年齢が下がっています。まだ完全ではありませんが、いい方向に回り始めたのは、関係者にとってうれしいことです。また、日本の森林面積は国土の67%で世界第3位です。つまり、市町村の面積は、平均67%が林です。よって林業再生は、地方創生そのものだと考えています。もうひとつ、商工会議所の立場から考えると、ここ2年ほど、多くの農業関係者と林業関係者が加入してくれています。現在では全国515の商工会議所のうち270会議所に農協が加入していますし、林業団体の加入している商工会議所も増え、139会議所になっています。商工事業者が、農業関係者や林業関係者とコラボレーションできる可能性が高まっています。中小企業が親族以外にも 事業承継できる環境が必要―財務局も地方創生の取り組みを進めていますが、アドバイスはありますでしょうか。三村 商工会議所のもう一つの課題は、中小企業の後継者問題です。経営者の年齢の最も大きな層は66歳です。20年前は47歳くらいでしたから、そのままシフトしていることになります。一方で企業の数は過去5年で約40万社減少しています(図表3)。帝国データバンクによると、年間の倒産件数は1万社もありませんし、新たに開業した企業もありますから、それ以外は、何らかの理由で廃業している企業ということです。廃業している企業の半分は黒字企業で、中には非常に利益率の高い企業もあります。こうした企業が廃業せざるを得なくなっていることは、日本再生にとっても、地方創生にとっても、非常にもったいない話だと思います。一方、すでに若手が事業承継した企業のデータを取ってみると、収益率は上がっています。若手に承継させた新会社は旧会社と比較して、売上高利益率が目に見えて上がっているのです。商工会議所の課題は、適切な事業承継をどう実現していくかです。一つの解決策はマッチングだと考えています。息子に承継させたくてもできないケースもありますし、現実的に親族以外への事14ファイナンス 2017.9

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