ファイナンス 2017年8月号 Vol.53 No.5
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日本は高齢化率が進行しており、4人に一人以上が高齢者となっている現状や、国の一般会計の歳出に社会保障関係費が3分の1を占める一方で、一般会計の歳入の3分の1が公債金で賄われている現状について説明。今後は更なる高齢化に伴い、社会保障給付は一層増加していく見込みであることから、社会保障給付の徹底した見直しを行うことや成長力を高めることで歳入増に取り組むことが急務でることを指摘した。それに対し、「働き方改革実行計画」を策定し、労働参加率や生産性の向上に取り組んでいることについて述べた。労働参加率と生産性を向上させることで、賃金が上昇し、需要が拡大する「成長と分配の好循環」が構築されることが期待され、それが、持続可能で包摂的な成長を実現となると指摘した。世界経済を取り巻く不確実性については、自由貿易・市場経済による経済成長と包摂性を両立することが必要であることを説明した。最後に、日本及びアジア諸国において、子供達が「この国に生まれてよかった」と思える国を実現することが重要であることを強調した。世界経済・アジアの経済見通しの勢いが増しつつあることを歓迎しつつも、米国の経済政策が明確でないことや、世界の政治情勢、所得格差の拡大、人口動態の変化が不確実性となっているため、これらの課題に対処し、包摂的成長を支えるための財政政策が必要である。一方で、包摂的成長は人口動態の変化に適切に対処していく場合においてのみ可能となるため、医療や年金等の支出の増加を抑制する給付制度の改革、人口動態の変化による影響を和らげるための税制改革、女性や高齢者を中心とした労働参加率の引き上げ、公的債務の持続可能性についての中期的財政フレームワーク、が必要となると述べた。日本やアジア諸国は少子高齢化社会に直面しており、少子高齢化が財政政策の在り方に大きな変化をもたらす。第一に、労働力人口の相対的な減少は、政策の生産性に対する外部性を低下させ、財政政策の効果を減少させる。第二に、地方は都市よりも高齢化のペースが早く、既にインフラが整備されている日本では、特に波及効果が低くなる。第三に、高齢者の消費は若年者の消費よりも少なく、消費の経路を通じた波及効果も低下すると指摘した。最後に、高齢者は若年者と比較して安全資産を選好する傾向があるため、リスク・キャピタルの供給に懸念があることが述べられた。次の世代が「この国に生まれてよかった」と思える国を大塚財務副大臣包摂的成長を支えるための財政政策が必要少子高齢化が財政政策の在り方に変化をもたらすオープニングセッションの概要古澤IMF副専務理事吉野ADBI所長4ファイナンス 2017.8

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