ファイナンス 2017年8月号 Vol.53 No.5
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づけを明確化*17したり、ESGを組み込んだインデックスなど、機関投資家にとって扱いやすい金融商品を開発していくことが考えられる。•公的セクターによる投資促進措置政府や、公的国際金融機関といった公的セクターは、例えば以下のような、様々なリスク軽減措置(risk mitigants)や、取引円滑化措置(transaction enablers)を提供し、グリーン・インフラに対する民間投資を促進することができる。(1)信用補完(credit enhancement)公的セクターが、事業者の債務の一部を保証する、あるいは劣後部分を引き受けることにより、事業の信用力を高める。例えば、2016年、フィリピンのティウィ・マクバン地熱発電所の建設資金調達のため、機関投資家向けにグリーン・ボンドが発行され、ADBがその元本・金利の75%を保証した*18。(2)礎石投資(cornerstone investment)投資ファンドの組成等に際し、公的セクターが先んじて投資を行うことにより、民間投資の呼び水とする。例えば、Danish Climate Investment Fund (DCIF)*19は、デンマーク政府が一部を出資した上で、デンマークの年金基金等からの出資を集めたファンドで、開発途上国における再生可能エネルギー事業等に投資している。(3)ウェアハウジング(warehousing)単体では投資の対象となりにくい小口のローンやプロジェクトを集めて、投資に適した金融商品に転換する。例えば、シティグループ等の金融機関と、米国のいくつかの州がPPPによりWHEEL(Warehouse for Energy Eciency Loans)という仕組みを立ち上げ、個人の住宅の省エネ改修のためのローンを買い集め、ABSとして販売している*20。(4)グリーン・バンク(green investment bank)*21政府等の出資により、グリーン・ファイナンスを目的とした公的金融機関を設立する。例えば、イギリス政府の100%出資により設立されたUK Green Investment Bankは、数々のグリーン・プロジェクトに投資を行い、収益を上げ、ついには民営化されることとなった。日本でも、環境省の所管する「地域低炭素投資促進ファンド事業」により設置されたグリーンファンド*22及び、その基金設置法人である一般社団法人グリーンファイナンス推進機構が、グリーン・バンクの一つとみなされている。以上のように、グリーン・ファイナンスを通じて、「環境」と「金融」は不可分のテーマとなりつつある。次回以降では、その流れを端的に示すグリーン・ボンド市場の発展及び、気候変動が金融市場にもたらすリスクと、国際社会・日本の対応について紹介したい。*16)詳細は以下を参照。OECD (2017) “Investment governance and the integration of environmental, social and governance factors”, http://www.oecd.org/cg/Investment-Governance-Integration-ESG-Factors.pdf*17)例えば2017年5月の「日本版スチュワードシップ・コード」の改訂において、ESG要素が、機関投資家が把握すべき事項に含まれることが明確化された。*18)http://www.adb.org/news/adb-backs-rst-climate-bond-asia-landmark-225-million-philippines-deal*19)http://www.danishclimateinvestmentfund.com*20)http://www.citigroup.com/citi/news/2015/150615a.htm*21)詳細は以下を参照。OECD (2016) “Green Investment Banks:Scaling up Private Investment in Low-carbon, Climate-resilient Infrastructure”, http://www.oecd-ilibrary.org/finance-and-investment/green-investment-banks_9789264245129-en*22)http://greennance.jp22ファイナンス 2017.8グリーン・ファイナンスの最前線SPOT

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