ファイナンス 2017年7月号 Vol.53 No.4
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形態の大口化と小口化が混在し、また、密輸経路を頻繁に変更するなど、手口の巧妙化は一段と進んでいる(参考2・3)。さらに、国際的にテロの脅威が高まりを見せている。欧米や東南アジア等では痛ましい事件が相次いでいるが、アルカイダやイスラム国等のテロ組織は我が国もテロの標的と示唆している。また、テロ組織にとって、オリンピックのような世界の注目が集まる国際イベントは自らの組織の勢力誇示とテロの恐怖の拡散手段として格好の機会であると指摘されている。テロ組織は多くの訪日旅客が出入国する時間帯や貨物量の増加に乗じて、爆発物等のテロ関連物資やテロの資金源となる不正薬物等を貨物に紛れ込ませるだけでなく、テロ関連物資を分解してあたかもテロとは関連のない貨物と見せかけてテロ関連物資の密輸を試みるなど、水際取締りの手法を入念に調査し、綿密な密輸計画にもとづいて犯行に及んでいるおそれがある。したがって、我が国税関は、多くの外国旅客が少しでも長く日本に滞在できるよう、帰国した日本人旅客が少しでも早く帰途につけるよう、また、貨物が少しでも早く宛先に届くよう迅速な通関を行うと同時に、不正薬物やテロ関連物資が我が国に密輸されぬよう厳格な取締りを行うという、相反する取組を両立しなければならない。この両立を可能とさせるものは、税関職員の熟練した取締技能と経験であるが、こうしたモノとヒトが大量移動・大量輸送される時代において、取締対象を絞り込み、不正薬物やテロ関連物資を摘発するメリハリの効いた取締りを可能とするうえで、今後益々重要な位置を占めるのは情報である。以下では、情報にもとづく水際取締りにおいて重要な役割を果たす取締検査機器の配備と法制度の整備について紹介したい。水際取締りの取組ここで我が国税関が発足した19世紀まで歴史を遡ることとしたい。我が国が横浜を開港し、ア[参考2]不正薬物の密輸摘発状況08164984033645096261,0076305221,649393181550111356661404918752275713213743492874083333224024828595494221,5013953134022963263083823901,896H19H20H21H22H23H24H25H26H27H28合計その他大麻覚醒剤件数覚醒剤大麻その他件数5001,0001,50005001,0001,5002,000(押収量:kg)(摘発件数:件)不正薬物の摘発件数と押収量の推移892(注)その他とは、あへん、麻薬(ヘロイン、コカイン、MDMA等)、  向精神薬及び指定薬物をいう。 (注)1.密輸押収量には、税関が摘発した密輸事件に係る押収量の他、警察等他機関が摘発した事件で税関が当該事件に関与したものに係る押収量を含む。2.警察庁、財務省、厚生労働省、海上保安庁(内閣府集計)調べ99.3%0.7%2,666kg密輸押収量分覚醒剤の国内押収量全体に占める密輸押収量の割合(平成23~27年累計)覚醒剤の押収量は過去10年間で最高を記録覚醒剤の国内押収量全体に占める密輸押収量の割合は9割以上4ファイナンス 2017.7

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