ファイナンス 2017年7月号 Vol.53 No.4
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1はじめに財務総合政策研究所(以下、財務総研)国際交流課では、国際協力活動として、開発途上国に対する知的支援及び海外の研究機関との研究交流を行っている。対インドにおいては、インドの経済研究機関との共同カンファレンスの開催、各研究所主催の会議への講師招聘・派遣等を通して交流を深めている。財務総研ではインド関連の活動を2010年度より本格化させ、インド国際経済関係研究所(ICRIER)、インド応用経済研究所(NCAER)との研究交流に係る覚書を締結、更新している。2011年度には省内でのインドワークショップを立ち上げるなど、インドの政治経済に関する知見の蓄積、研究者間のネットワーキングを継続的に進めている。近年は、モディ政権の政策が少しずつ前進したことにより、日本企業のインドに対する関心がより一層高まっている。本稿は、インドの経済情勢、日本の対印投資の現状に触れつつ、財務総研の活動状況を紹介するものである。近い将来、世界最大の人口となり、巨大な労働市場にもなるインドについて、その魅力的なポテンシャルと同時に、同国の抱える諸課題について、本稿が読者の理解の一助となれば幸いである。なお、本稿における意見に係る部分は、全て執筆者の個人的見解であり、財務省及び財務総研の見解ではない事をお断りさせて頂く。また紹介する情報(経済データ・政治動向等)については、あくまで執筆時点での情報であることをお含み置き頂きたい。2インドの経済情勢インドは独立以降1991年まで、政府の強力な統制の元で閉鎖的な経済運営が行われていた。しかし、1991年に経済自由化路線に転換し、貿易・投資・企業活動等に対する構造改革に着手した結果、インド経済の成長率、安定性も共に高まった。特に経済自由化の成果が本格的に表れ始めた2000年以降、インドの経済成長率は大きく上昇し、9%台の高成長を遂げていたものの、その後内需の低迷に加え、外需の落ち込みにより低迷した。そのような中、2014年にモディ政権が誕生し、2014年度の成長率は+7.2%、2015年度は+7.6%と2年連続の7%台となっており景気は緩やかに回復している。この成長率は世界経済が低迷する中で、世界のインドへの期待は高いものと思われる。また、インドの政策金利に関して、前中銀総裁であるラジャン氏は計5回にわたって政策金利の利下げを行い、6.5%とした。その後就任したパテル新総裁の下、2016年10月に初の金融政策委員会(MPC)会合が開かれ、インフレ率低下の見立てのもとに利下げを実施し、政策金利を6.25%に引き下げている。17年度(年度は4月~翌年3月)の中央政府予算案は、昨年に引き続き農村部の支援や道路・鉄道などのインフラ投資を重視する内容となっている。歳入面について、州税であるVAT(財取引モディ政権の政策と今後の課題:投資環境改善の動きと 財務総研の取組み財務総合政策研究所 国際交流課 研究員 藤澤 隼人財務総合政策研究所 国際交流課 研究員 吉川 保Spot0528ファイナンス 2017.7SPOT

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