ファイナンス 2017年7月号 Vol.53 No.4
25/56

ニバーサル・ヘルス・カバレッジ)の実現に向けて平時からの保健システム強化に取り組むことは、国際社会にとって極めて重要な開発課題である。これは、戦後早期に国民皆保険制度を導入し、医療システムを整備してきた日本の経験を役立たせることができる分野でもある。なお、2014年のエボラ出血熱の流行において、パンデミック発生時の迅速な資金供給メカニズムの欠如が危機の拡大を招いたことを教訓に、日本が議論を主導して、昨年5月に世銀はパンデミック発生時に迅速かつ効率的な資金動員を行う資金メカニズムであるパンデミック緊急ファシリティ(PEF)を設立した。また、日本は本年1月、世銀との間で「日‐世銀UHC共同イニシアティブ」に合意し、アフリカやアジア等のパイロット国向けのUHC推進支援やUHCに係る知見のグローバルな普及促進を通じ、途上国におけるUHC推進や危機への備えの強化を世銀と共に支援していくこととしており、その成果は本年12月に東京で開催するUHCフォーラムで報告される予定である。以上のように、IDA18交渉会議において、日本が防災や国際保健の重要性を主張した結果、自然災害やパンデミックへの予防・備え・対応がIDA18の重点政策として位置付けられることとなった。これにより、IDA18の具体的な政策目標として、例えば「各国別の支援戦略を策定する際に、気候変動と防災についての観点を盛り込むための検討を行うこと」や、「25か国以上でパンデミックに備えるための計画策定を支援すること」といった事項が掲げられることとなった。3.3 卒業移行国支援さらに、今次増資の主要論点の一つは、一人当たり所得が中所得国の水準に達したためにIDAから卒業する国への支援の在り方であった。具体的には、IDA18ではベトナム、スリランカ、ボリビアの3ヶ国が卒業移行国であり、IDAからの卒業と同時にIDA資金を皆減すべきか、経過措置として卒業移行国支援(IDAからの融資を暫定的に継続)を実施すべきかが議論された。当初、世銀事務局は、上記3カ国に対し、卒業移行国支援としてIDA18ではIDA17と同規模のBen Manser/World Bankファイナンス 2017.721国際開発協会(IDA)第18次増資について SPOT

元のページ  ../index.html#25

このブックを見る