ファイナンス 2017年7月号 Vol.53 No.4
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2017年5月25日、財政制度等審議会は、「『経済・財政再生計画』の着実な実施に向けた建議」を麻生財務大臣に手交した。今回は4月に就任された榊原会長の下で編纂された最初の建議となった。本建議は、「経済・財政再生計画」の2年目に際し、2020年度のプライマリーバランス(PB)黒字化の目標達成に向け、同計画に沿った歳出改革を着実に実行するための指針を示したものである。詳しい内容は建議本文をご覧いただくこととし、ここでは後掲の建議の概要に沿って、特にポイントとなる点をご紹介したい。1財政健全化の意義今回の建議では、財政健全化の意義について、「将来世代に対する我々の責務である」と明記している。PBとは、その年度の政策的経費をその年度の税収等でどの程度賄えているかを表す指標である。現在の我が国のようにPBが赤字であるということは、今を生きる我々が、自らの直接的な受益に見合う負担すら負わず、将来世代にこれらの負担を押し付けていることを意味している。税収を自由に使う選択肢を将来世代から奪わないという意味で、「PB黒字化は、将来世代に対する最低限の責務である。」とされている。また、これまで累次の建議において、2020年度のPB黒字化はあくまで「一里塚」に過ぎないとの主張がなされてきたところであるが、目指すべきは、利払い費を含めた収支を表す「財政収支」に着目した財政運営であり、この意味においても、通過点としてのPB黒字化の実現の旗を降ろすことは許されないとしている。2財政健全化の重要性・メリット財政健全化は、国家及び経済の国際的な信認を維持し、高めていくためのもっとも重要な指針である。また、我々にとってメリットもあるものである。今回の建議では、以下の2点のメリットを挙げている。第1に、将来不安の解消による経済の安定化である。財政や社会保障の持続可能性への不安が残る中、景気を刺激するような財政拡張を行っても、将来的な財政破綻のリスクが増大し、不安の財政制度等審議会 「『経済・財政再生計画』の着実な実施に向けた建議」について主計局調査課長 中島 朗洋主計局調査課調査第1係長 宇佐美 紘一Spot02(左から、中空委員、小林委員、榊原会長、麻生財務大臣、田近会長代理、土居委員、吉川委員)ファイナンス 2017.715SPOT

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