ファイナンス 2017年7月号 Vol.53 No.4
17/56

今回の会議では、技術変化や世界経済の統合が、生活水準を世界で上昇させる上での重要な貢献を果たしてきた一方で、世界経済が長期にわたる緩やかな成長や大きくかつ拡大する格差に直面しているとの認識が共有された。こうした認識の上で、成長が包摂的、かつ、雇用が豊富で、我々の社会の全ての層の利益となることを確保することへのコミットメントがなされ、格差への対応のための財政政策、構造政策等の政策オプションを示した、「成長と格差に関するバーリ政策アジェンダ」が採択された。この政策アジェンダでは、格差に対応するための財政政策として、医療等の社会的サービスの効率性向上、質の高い教育の提供などが、構造政策としては、労働市場の二極化(duality)の軽減、労働市場への参入障壁の引下げ等による雇用促進、女性の労働参画促進等が挙げられている。麻生大臣からは、経済成長と包摂性の両立が重要であること、包摂的成長の実現に当たっては構造改革が重要な役割を果たすこと、包摂性のためと称して自由貿易に逆行すべきでないこと等を説明した。3テロ資金対策・サイバーセキュリティテロ資金対策に関しては、わが国が議長国として取りまとめた「テロ資金対策に関するG7行動計画」に基づき、当局間の国内および国際的な情報共有や民間セクターとの協力、あるいは国連安保理決議に基づく金融制裁の実施におけるG7諸国間の協力を更に強化することへの強いコミットメントが示された。また、サイバーセキュリティについては、直近のサイバー攻撃も踏まえ、増大する脅威への強い危機感と適切な政策対応の必要性の認識が共有されるとともに、首脳・大臣レベルで今後継続的に議論していくべきとの意見が出た。4国際課税国際課税に関しては、より公正かつ現代的な税システムのために取り組むこと、及び、経済活動に参加する全ての者にとってグローバルに公平な競争条件を実現することに引き続きコミットし、この目的のため、G20/OECD BEPS(税源浸食と利益移転)パッケージの適時の、一貫した、広範な実施の重要性を改めて確認した。また、「租税犯罪等の不正資金に関するバーリ宣言」が採択された。このバーリ宣言は、租税・金融犯罪対策のため、税務・マネロン・法執行当局間における省庁横断的かつ国際的な情報共有等を通じた協力を支持する内容となっている。その他、税の透明性の向上と当局間の情報交換の推進、途上国に対する税関連の支援、及び経済の電子化への対応の重要性が確認された。麻生大臣は、本議題においてリードスピーカーを務め、国際課税分野全体にわたり、国際協調を一層深化させる必要があり、単独主義的な各国の対応は避けるべきであると指摘した。その上で、EUにおける国別報告書公表の提案は、BEPS合意の一貫した実施の障害となり得ること、税の透明性向上のため、G20で合意した「基準」に基づく「非協力国」に対して、各国が足並みを揃えて実効性ある措置を取るべきであること等を発言した。参考2)コミュニケ(抜粋)1.世界経済の回復は勢いを増しているが、成長は依然として、緩やかであり、かつ、GDPは多くの国で潜在GDPを下回っており、リスクのバランスは下方に傾いている。同時に、より長期の潜在成長率も依然として抑制されている。こうした背景の下、我々は国際的な経済・金融協力へのコミットメントを再確認し、強固で、持続可能で、均衡ある、かつ、包摂的な成長という我々の目標を達成するために、全ての政策手段-金融、財政及び構造-を個別にまた総合的に用いることを引き続き決意している。金融政策は、引き続き、中央銀行のマンデートと整合的に、経済活動と物価の安定を支えるべきである。我々は、包摂性を高め、かつ、公的債務残高対GDP比を持続可能な道筋に乗せることを確保しながら、財政政策が成長と雇用創出を強化するために柔軟に使用されるべきであることに同意する。その際、我々は、質の高い投資への重点化等を通じた財政の質の向上の重要性に合意する。我々は、生産性と潜在生産力を向上させるための構造改革を推進することに引き続きコミットするとともに、包摂性を促進する改革を支持する。我々は、構造改革の実施を促進することを決意し、また、これらの構造改革が、マクロ経済政策と適切に調整されるよう確保する。我々は、為替レートは市場において決定されること、そして為替市場における行動に関して緊密に協議することという我々の既存の為替相場のコミットメントを再確認する。我々は、我々の財政・金融政策が、国内の手段を用いてそれぞれの国内目的を達成することに向けられてきていること、今後もそうしていくこと、そして我々は競争力のために為替レートを目標にはしないことを再確認する。我々は、全ての国が通貨の競争的な切下げを回避することの重要性を強調する。我々は、為替レートの過度の変動や無秩序な動きは、経済及び金融の安定に対して悪影響を与え得ることを再確認する。我々は、国内の成長を支え、政策に関する不確実性を軽減し、負の波及効果を最小化し、透明性を向上させるために、マクロ経済及び構造問題に関する我々の政策行動を注意深く測定し、ファイナンス 2017.713G7バーリの概要について(2017年5月12日~13日開催、於イタリア・バーリ)SPOT

元のページ  ../index.html#17

このブックを見る