ファイナンス 2017年7月号 Vol.53 No.4
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これまでにない巧妙な 手口の密輸が増えている成田、羽田、中部、関西、福岡の各空港は、日本の5大空港と言われていますが、その中で成田国際空港は、入国客数、密輸の摘発数ともに最も多い空港です。それを管轄しているのが東京税関成田税関支署です。成田空港では、2015年、2016年と密輸の摘発件数が大きく減少しています。「これには、理由がある」と東京税関成田税関支署次長の飯島好之氏は、次のように述べています。まず、密輸の手口が旅客の携帯品から貨物にシフトしていることです。貨物に隠匿しているということは、密輸が大口化する傾向にあります。また、今まで摘発実績のあった国際郵便物を取扱う官署の廃止により、別の官署で通関されるようになったことも要因のひとつになっています。摘発件数が減少してはいるものの、その手口は巧妙化しています。昨年は、覚醒剤を樹脂に練り込んでスーツケースと一体化させて、密輸しようとした過去に例のない全国的にも初めての手口が摘発されました。「旅客の不審な言動が摘発の端緒となりました」(飯島氏)2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、訪日外国人数も増えることが予測されます。税関では、テロ対策を行うとともに、水際での密輸取締りを更に強化していくということです。 2020年東京オリンピックを控え重要性増す成田空港の安全確保東京税関輸出入される商業貨物や出入国する旅客等の携帯品を破壊することなく貨物に付着した不正薬物などの微粒子を短時間で探知できる機器「TDS」最近は知らない間に不正薬物の運び屋として利用されてしまうケースが増えています。たとえば、海外旅行先のガイドと親しくなり、ガイドからもらったプレゼントの中に覚醒剤などが仕込まれていることもあります。このようなケースではガイドと連絡先の交換をしており、帰国後に電話がかかってきます。「プレゼントは間違いだった。私の友人に渡して欲しい」と言われるのです。あるいは恋愛感情を利用したものもあります。外国人犯罪組織に属する外国人が日本の女性に近づき、交際を始めた段階で海外旅行に出かけます。一緒に帰国する予定だったが、男性に「仕事の都合で遅れて帰る」と言われ、女性が荷物を持って先に帰国します。その荷物の中に覚醒剤などが仕込まれているのです。このように、犯罪組織に利用されることのないよう、海外旅行の際には、安易に荷物を預かるなどしないよう十分な注意が必要です。海外旅行で密輸事件に巻き込まれないためにColumn写真左は東京税関成田税関支署次長の飯島好之氏8ファイナンス 2017.7

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