ファイナンス 2017年5月号 Vol.53 No.2
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今回から国際機関づくりの過程に入ります。国際機関設立に伴う技術的な話については、できるだけ「注」の形でまとめ、読み易くしました。従って、本稿を創設見聞録としてお読みいただく場合は本文のみで十分と思います。また全体の流れの中で、今回はどの部分かを理解いただくために、図を作成しました(資料1参照)。なぜ当初国際機関化の作業の早期開始に消極的だったか(2012年春)2012年春になって、折角(民間)組織を立ち上げたのだから、時を置かず出来るだけ早期に国際機関へ移行すべきだとの声が2~3の国から強く主張されはじめました*1。2011年に魏ウェイ所長と2人でシンガポールへ上陸し、ほぼ1年間の悪戦苦闘を経ても、2012年春の時点ではまだまだサーベイランス(経済調査・分析)の陣地の確保ができたとはとても言えない状態でした。自転車で言えば漕ぎ始めの一番不安定な時期のようなものです。自分としては、国際機関化の意義、例えばAMROの文書が押収されないとか、各国に対してIMFに対するのと同じ情報を提供する義務を課すとかの点などについては、重要と考えていました*2。ただ早期の国際機関への移行には消極的で、意見を求められればまだまだ時期尚早と答えていました。理由の第一は、マクロ経済の調査・分析のため国際機関を作る はなしASEAN+3マクロ経済 リサーチ・オフィス(AMRO)創設見聞録その4、国際機関の設立準備の開始(2012年春~夏)根本 洋一資料1 ASEAN+3マクロ経済リサーチオフィス(AMRO)の設立経緯(2008年~2016年)2008年2011年2012年2013年2014年2015年2016年国際機関化サーベイランス経済の調査・分析危機対応の枠組み2008年9月リーマン・ショック↓2009年2月ASEAN+3財務大臣特別会議2011年4月AMRO(カンパニー)設立2011年11月サーベイランス開始2016年2月国際統計整備支援開始2012年5月国際機関化検討の指示2014年10月協定案に署名2015年~各国議会による協定の承認2010年3月CMIM(契約の一本化)発効2016年2月国際機関の創設2013年5月~資本フロー動向に焦点2016年2月CMIM事務局としての機能能始2013年5月~バーナンキ議長発言による市場の混乱2015年8月~人民元切り下げに伴う市場の混乱2011年8月~米国債格下げに伴う市場の混乱48ファイナンス 2017.5連 載|国際機関を作るはなし

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