ファイナンス 2017年5月号 Vol.53 No.2
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グ」という名目ではやらないんですよ。体操の技を行うために必要な筋肉を、体操でやっているという感じなので。僕は、練習をすることが筋力トレーニングになる、そこはイコールになるので、筋力を上げるためにわざわざ筋力トレーニングをやったりはしないです。▶神田: 例えば腕立て伏せみたいなものも昔からもやらないのですか。▷内村: やらないです。体操を覚えたてというかやり始めの頃は、体を支えるために必要な腹筋とか背筋とか腕立て伏せとかはやりますけど、そういったことは僕は多分5歳くらいで終わっていると思います(笑)。▶神田: 本当だったのですね(笑)、私は半信半疑でしたので、いや、驚きました。▷内村: やらないものだから、ジムとかに行って、一杯筋トレの機械が置いてあっても、やり方がわからないです(笑)。本当に「これは何をする機械なんだろう」というぐらいなので。だから体操の器具があったほうがトレーニングができます。▶神田: 内村さんの食生活も衝撃的です。食事に特別なことはしていないというだけでなく、好き嫌いが多く、好きなものだけを食べる姿勢を貫いてきたとまで仰っています。『オリンピックのアスリートたち 内村航平』では、濃い色の野菜、特にグリーンピースは駄目でチョコが大好き、『栄光のその先へ』では、「朝昼食べないで練習するのにどこからエネルギーが出ているのか僕にも判らないです」と記されています。常識的には極めて滅茶苦茶な食生活ですが、それで世界一の身体が維持できる事実があって混乱します。具体的な食生活のあり方と、どうしてそれでもっているのか教えてください。▷内村: 今の食生活に至ったのはずっと前からじゃないんですけど、体操って空中に飛ばなきゃいけないので、それなりに軽いほうが有利なんですよ。やはり重さがあるとちょっといつもより高く飛べないなとか、回転の係り具合が違うなっていうように、本当に500グラムでも違うと変わってきちゃうので、より軽くするために「一日一食」というのをやっています。昔はちゃんと食べていましたけど、よりプロフェッショナルになっていくにつれ、食事のところも変えていかないと、競技をより毎日コンスタントに練習していくためには難しいなって感じ始めたので。大学3、4年ぐらいのとき「一日一食」を一週間やってみたら、すごいちゃんとした練習ができて、そこからはそうやるようにしていますね。でもなんでそこまで体力がもつのかっていうのは、自分でも分からないし、栄養士さんに聞いてもわかりませんと言われて(笑)。多分もともとがそういう体質なんだと思いますけど。体操は結構気持ちでコントロールできる競技だと思うので、気持ちさえしっかり強いものがあれば、何でも乗り越えられるかなっていうのはありますね。▶神田: 1月12日に復興応援大使に就任されました。先週、官邸で安倍総理にもご挨拶されました。演技を通して被災者に勇気や感動を与える素晴らしいお仕事だと思います。私も微力ながら被災地支援に携わってきましたが、内村さんが東日本大震災の4か月後、世界選手権の直前であったにもかかわらず、長崎での復興支援チャリティーイベントに参加してくれたことを感謝と共に覚えています。ぜひ、今後の復興支援への抱負を仰ってください。▷内村: 「3.11」の大震災のとき、僕は社会人になりたてぐらいで、大きな津波ではないですけど、埼玉県の震度6弱ぐらいのところにいて、すごく揺れて、計画停電とかもありました。津波にあった方たちよりはそんなに大変な思いはしてないですけど、それなりに被災した形にはなっていました。でもテレビで震災のことをずっとやっていたときに、何もできなかった自分にすごい無力44ファイナンス 2017.5連 載|超有識者場外ヒアリング

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